第1章 転校生は・・・オンナ
『へぇ、そう。そうなの。それは、悲しかったわね。』
「キィーーーーーーーーー。」
『良く分かるわ、あなたの事。でもごめんなさいね。憑魂聴術・哀。』
帳が下りて約30分。
オレの予想とは裏腹に、4級程度の呪霊しかいないが順調に祓っていく。ただ、気持ち悪いのは1点。
「オマエ、呪霊と話せるのか?」
『え、話せないの?』
「特級となりゃ別だろうけど、こんな蠅頭みてぇなのと話してる術師初めて会ったわ。」
彼女からしてみれば、話せないことの方がよっぽど不思議なのだろう。傑にも話せないのか、と目で訴える。
「 話せないね。それに私には呪霊がただ叫んでるようにしか聞こえないかな。」
「いつもそうやって祓ってんのか?」
『他に祓い方があるの?』
「オマエマジでなんっも知らねぇのな!」
5階建ての廃墟ビルを登り、彼女と噛み合わない会話を続ける。見せてもらった学生証には4級と書かれていて、弱っちぃと思ったがそうでも無そうだ。
『私以外見える人に会ったことないもん。』
「じゃあ、どうやって術式を?」
『良くは覚えてないけど、気付いたら出来るようになってた。確か、5歳くらいだったかな。』
「へぇ、田舎臭いけど才能はあんだな。」
『私アンタとは、』
そう転校生がイライラしながら口を開いたときだった。
ズドーンと大きな音を立てて2級の呪霊が目の前に現れたのだ。もちろん4級の彼女には到底祓えやしないことなど、オレだけじゃなく傑にもそれは分かっていた。
「ここは、オレが行く。傑は、転校生と離れてろ。」
そう言い、自分が盾となり一歩前に出ようとすると、転校生はオレの腕を掴む。その目からは強い意志のようなもが感じ取れ、彼女の言いたいことは大体分かった。
『助けてくれなくていい。これは私の試験でしょ?』
「あぁ、そうだ。でもオマエには倒せない。」
『どうして?やってみないと分からないじゃない。』
「やってみて、ダメだったらどうするんだよ?」
ああ言えばこう言うの、まさにソレで。
何かとつかかってくる転校生とオレの相性は本当に最悪だと思った。でもそれよりも何よりもびっくりしたのは、コイツのイカれっぷりだった。
『やってダメだったら死ぬだけだよ。』