第1章 転校生は・・・オンナ
『えっと・・・ここは?』
「んな野暮なこときくんじゃねぇよ、廃墟ビルに決まってんだろうが。て、言うかさぁ、そもそも転校生さん、本当に祓えんの?」
「悟、口が悪いよ?」
車から降り、ごめんね、と転校生に謝る傑の横でため息をひとつ落とす。
夜蛾から転校生がくると聞いたのは1週間ほど前。オンナと知って美人の巨乳を期待していたオレがバカだった。
転校してきたソイツは、良く言えば純粋無垢。ハッキリ言えば地味。オレのタイプでもなければ、好みでもない(ヤれるか、ヤれないかで言えばヤれる)オンナだった。更に期待していたようなエロい巨乳でもないことが、オレのやる気を一気に削いだ。
あまり感じ取れない呪力量に、一体どんな手法なのか見ものだなぁと考えると同時に、呪霊に痛めつけられる彼女を想像して笑みが溢れた。
「失礼。私、補助監督の松野と申します。以後お見知りおきを。早速ですが、こちら取り壊し予定の廃墟ビルです。工事の際に低級程度の呪いを視認。山田さんにはその呪いを祓ってもらうのが今回の試験です。」
さぞビビっているかと転校生の顔をサングラス越しに覗き見るも、彼女は顔色ひとつ変えることなく、はいと頷いた。意外と肝が据わってるタイプなのだろうか、と疑問を抱いたのはオレだけではなかった。
「怖くないの?」
『ないですね。』
「へぇ〜。見かけによらず、タフなんだね。」
強気な態度とほんの少し傑と仲良くしてる様に、ちょっとだけ腹が立ってしまうのは、どうしてだろうか。まだ出会ったばかりだが、このオンナとの相性は最悪な気しかしない。
だからだろう。自分の口から出てくるのはトゲのある意地悪な言葉たちばっかりだ。
「泣いても、漏らしても助けてやんねぇからな?転校生。」
『自分でなんとかするんで、助けてくれなくて結構です。』
「なーにぃー?」
「はーい、そこまで。」
睨みつけながら言い返してきた転校生とオレの間に傑が入り、この場を制する。落ち着けよ、なんて言うが生意気な転校生への苛立ちは募るばかりだ。
「夏油くん。あとは頼みますよ。」
「はい。」
「では、ご武運を。闇よりいでて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え。」
そうして帳が下り、辺りは段々に昼から夜へと変化した。