第1章 転校生は・・・オンナ
「へぇ~、おのぼりさんか。どうりで、」
「花子ちゃんね、とても素敵な名前だね。」
「クズがこれ以上増えなくて安心した。」
担任の夜蛾先生に案内され、言われた通り定型文のような挨拶をしたが、返事はまるで歓迎など(期待もしていないが。)到底されていないものだった。
“「どうりで、」”
の後は言わずもがな。
含んだ笑いを残したサングラスのオトコは、さぞ脚が長いのだろう。窓側の席で机にソノ脚を放り出していて。
真ん中に座るロン毛のオトコは、ニコニコと張り付けた笑顔が胡散臭くて。
唯一の女子は、教室で(しかも未成年なのに)煙草を吹かしていた。
人の少ない町を転々と暮らしてきた身からすると、随分都会の高校生は擦れているのだなと感じた。少々失礼な奴もいたが、それについては何も言わなかった。
その後夜蛾先生からの3人の紹介もそこそこに、家入さん以外の3人で実地試験へ向かうようにと指示される。もちろん試験を受けるのは私であり、彼らは念のための付き添いだ。
「あーだりぃ。」
重苦しい車内で初めに口を開いたのは、助手席に乗るサングラスのオトコ五条悟だった。相も変わらず長い脚はダッシュケースの上に放り投げられていた。
「やめないか、悟。・・・すまないねぇ、転校生。ああ見えて根は良いヤツなんだ。」
『いえ、こちらこそすいません。』
とは謝ってみたものの、全くもって彼のいい部分は見えていない。が、そうとも言えるはずもなく、言われるがままに一緒に乗った後部座席の夏油くんと会話を続ける。
『あの、試験って聞いたんですけど、これは今どこに向かっているんですか?』
「んー、それは着いてからのお楽しみ・・・かな。」
なんて微笑む夏油くんは、やっぱりどこか胡散臭さが滲み出ていた。