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この愛は呪いだ【呪術廻戦】

第4章 この夜空にあなたを思い浮かべて







『・・・辛いっ、』



寮の部屋よりも何倍も広い部屋で、一人弱音をポツリと吐くがその声は誰にも届かない。北海道にきて2週間。呪力を使いすぎているダメージによる頭痛と微熱に加え、竹刀の鍛錬による筋肉痛で身体はおろか心も既にボロボロだった。


“秘密の部屋”
そう呼ばれるソコはまるで地獄で。初めて入ったときには蠅頭の声を聞き分けることすらできず、なんと5分も経たないうちに失神してしまった。


2週間たった今、漸く半日ソコに入ってそれぞれの蠅頭が何を言っているのか聞き分けることが出来るまでに、呪力を思うようにコントロールすることが可能になった。しかしやっぱりその反動で微熱が出てしまい、毎日のように身体はだるかった。


山田さんの広い屋敷は結界内ので、秘密の部屋以外に呪霊はいない。その点確かめようがないのだが、本当にこれで自分の呪力が上がっているのか甚だ疑問だった。


午前中は秘密の部屋で終わり、午後になると今度は山田さんから剣道を教しえてもらう。100回10セットとウソみたいな数の素振りを毎日繰り返すのだ。土曜日だろうと日曜日だろうと関係なしに、毎日だ。正直、五条と傑にぶん投げられていた方のが幾分か楽だった。


腕や足は筋肉痛、手には潰れた沢山の血豆。
毎日が地獄。辞めたい、逃げたい、辛い、泣きたい、色んな負の感情が日々纏わりつくが、それでも何とか続けられているのには理由があった。


まずは山田さん。
遠縁とは言え見ず知らずの私の為に鍛錬はもちろんのこと、食事の準備まで何から何まで気にかけてくれる。その恩に報いたい。


そして何よりの理由は、自分でここに来たいと、強くなりたいと決めたからには逃げたくなかったのだ。


ただ今日は、いつもと違った。
一日の修行を終えたあと、山田さんから全て読むように、と手渡された見るからに古い書物。部屋に戻るなり読み進めていくと、それが夜蛾先生から聞いた、あの女性の日記だとすぐに分かった。


その内容はなかなかに辛く酷いものだった。
秘密の部屋での修行の辛さ、親からの歪んだ愛、兄弟間での確執、彼女の周りを取り巻く大人たちの本音がズラズラと書かれていたのだ。


何度も目を背けたくなるような事実に、関係のない私でさえ心がナイフで抉られたような痛みが暫く続いた。

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