第4章 この夜空にあなたを思い浮かべて
『キスされてからずっと傑のことで頭ん中いっぱいだったんだからね?』
「それは本望だな。」
『そういうところっ!』
「ちゃんと責任はとるさ。」
夜蛾から話を聞かされて、いくらバカでもちょっとは思い悩んだりするのかと思って心配になったオレは、花子が部屋から出たのを確認したあと、少し間をあけてから部屋を出た。
すると屋上へと足を運ぶ花子の背中を追いかけるように傑が後ろから着いて行ったのが分かった。なんとなく、二人に着いて行ってはいけない気がして部屋へと引き返そうとしたが、向かいの部屋から硝子が出てきてニヤリと悪い顔をした。
そうして二人で屋上の扉に隠れながら、こっそりと楽しそうに騒ぐ花子と傑の話を盗聴していた。そこで漸く二人の呪力がブレていた理由を知ることができた。そして傑と楽しそうに話す花子がいつもより少しだけ可愛く見えるのは、気の所為だろうか。
『ちょっと今日のこと聞いてもいい?』
「なんだい?」
『お母さん、何か知ってたのかな。』
きっとオマエのお母さんは何も知らなかったぞ。と、聞かれてもいないのに勝手に心の中で先に答える。それに対して傑はどうだろうねぇ、知らなかったかもしれないね、なんてお得意の胡散臭い笑顔を貼り付けて答える。
それに花子が納得したのかどうかは知らないが、やっぱりいつもより可愛い花子になんだかソワソワした気持ちになる。そしてその隣にいる傑の笑顔も胡散臭いけれどどこか優しさが滲み出ていて。
理由は分からないが、なんとなく面白くなくて盗み聞きは辞めて部屋に戻ろうかななんて考えた。
「あーあ、心配して損したな。」
「嫉妬か?」
「何で?オレが?」
「だって五条も花子のこと好きなんだろ?」
「まさか。どうしたらそうなるわけ?」
「好きな子には意地悪したくなるってよく言うじゃないか。」
「小学生じゃあるまいし。」
なんて言ったものの、よくよく考えてみれば花子に意地悪をしていたのはいつもオレの方からで。まさか・・・オレがあの田舎娘を?とも思ったが、オレの好きなタイプは美人の巨乳で、1ミリも花子はそこに該当しないことに気が付きホッと胸を撫で下ろした。