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この愛は呪いだ【呪術廻戦】

第4章 この夜空にあなたを思い浮かべて







「珍しいな、花子が屋上にいるのなんて。」



私の声に気が付き、振り返る彼女は目を泳がせた。困らせてしまって申し訳ない気持ちと、意識してくれる嬉しさとで気持ちは半々だ。


花子が腰掛けるベンチの隣に同じように自分も腰を下ろす。するとあからさまに距離を取り身構えた花子に、もうキスはしないさ、と笑った。



「でもちゃんと話したくてね。」


『・・・うん。』


「初めて花子と会ったとき、良い意味で呪術師らしくないなって思ったよ。ちょっと無愛想だったけど。」


『それは、五条のせいだよ。私はね、傑のこと胡散臭そう・・・って思った。』


「全くひどいな。」



ごめんね、と花子は目を細めて笑う。



「熱心に鍛錬を続ける花子を間近で見て、もし妹がいたらこんな感じなのかなって初めの頃は思ってた。」


『・・・妹。』


「でもそのうちにだんだんに愛くるしいな、力になりたいな、守ってあげたいな、そう思うようになってさ、気が付いたときにはもう好きだったよ。」



隣に座る花子は耳まで真赤に染め上げて、大きな瞳をこれでもかというくらいに丸める。



「花子のことが、私は好きだ。」


『・・・っ。』


「全部が愛おしい。」


『なっ・・・っ、』



正直に言えば、花子の心も身体も全部欲しい。他の誰にも渡したくはないし、全部私のものになればいいとさえ思っている。


でもこれ以上花子に怖がられたくはないから、その言葉たちは致し方なく今は飲み込む。


案の定花子は、更に頬を赤らめて分かりやすいくらいに慌てふためいていた。それがなんだか可愛らしくて、ついつい笑ってしまった。



『あ、バカにしてるでしょ?』


「してないさ。可愛いなって思っただけだよ。」


『・・・やっぱり胡散臭い。』


「全く心外だな。君への気持ちも全部本当だよ?」



そう言うと、とうとう花子は下へ向き俯いてしまった。



『わ、私は、初めてだったんだよ?・・・キ、キスしたの。』



蚊の鳴くような声とはまさにこのことで。
星の明かりが照らす夜空に消え入ってしまいそうなほど、その声は小さくか弱いものだった。

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