第3章 恋に師匠なし術師に師匠あり
『・・・大丈夫かな、』
女子会に花を咲かせ、気がつけば夕刻。
私のベッドで寝そべる花子はポツリと呟いた。アイツらは最強らしいから大丈夫だよ、そう答えようと思ったけれど、なぜだか言い出すことはできなかった。
理由は明々白々。
今までの私も花子と同じようにアイツらを任務に送り出したあと、残された高専(ここ)で1人同じことを呟いていたからだ。
頭では理解している。
心配するようなほど弱くはない。そもそも戦えない私は心配すること自体おこがましい話で、任務の度にいつも蚊帳の外。できることと言えば怪我をして帰ってきたアイツらを治してあげられることくらいで。
毎回毎回嫌になるほど1人きりで考えて、最悪を想像して不安になって、ふざけながら笑って帰ってくるアイツらの声を聞いて安心して。
「・・・大丈夫だといいな。」
でも今日は違う。
この気持ちを半分こにできる友達が隣にいて、いつもよりちょっぴり心強いなんて思っている。そんなことを言ったら花子に笑われてしまうだろうか。とてもじゃないが、恥ずかしくて言えないこの気持ちは心の奥底に眠らせておくことに決めた。
そうして2人でアイツらに思いを馳せていると、急に何かを思い出したように花子が口を開いた。
『そういえば五条に聞きそびれたんだけどさ、』
「ん?」
『アイツ彼女いる?』
「藪から棒にどうした?」
『いや、昨日さ五条からいつもと違う香水の匂いがしたんだよね。』
多分オンナの人のだと思うんだ、と花子は付け足した。今までお互い恋愛の話はしてこなかったけれど、正直に言えば心当たりがあった。
ある日、街中で買い物をしてるとき。
お姉さんに声をかけられた五条がそのままホテルに入る瞬間を、一度だけ見たことがあったのだ。その女性が彼女じゃないことは一目瞭然。
そのあと恋へと発展したのかもしれないし、はたまた気まぐれで不特定多数の女性がいるのかもしれない。いずれにせよ真相は藪の中だ。
“ 愛ほど歪んだ呪いはないよ”
その言葉が全てのようで、五条が人を愛でるような感情を持ち合わせてるとは到底思えなかった。
「私たちに恋人がいないのに、五条にいるはずないだろう?」
そう言えば花子は、そうかも、と笑った。