第2章 体術体術ときどき座学
『っ、頭痛い。』
重たい頭痛と、眩しい朝日で目が覚めた。
祓った後の頭痛とも体感的には似ていたが、頭痛に加えて吐き気まである。これは、何を隠そう間違いなく二日酔いだ。
『あれ?待てよ、』
昨晩、傑の部屋からどうやって自室に戻ったのか、全く思い出せない。五条に核心を突かれた話をされて、少し、ほんの少し躍起になって缶チューハイを手あたり次第に飲んだところまでは覚えている。(3缶空けたとこまでは思い出せた。)
何をしているんだ、自分は。
そう呆れてしまい、大きなため息が零れた。
その場凌ぎでお酒を飲んで、無理矢理に思考回路をショートさせて。ただただ考えるのを放棄しただけに過ぎない。全く哀れだ。
“「自分で自分を呪ってる、の間違いだろ?」”
五条に言われた言葉が、脳内を支配したように何度もリフレインする。あの吸い込まれそうな蒼い目には、嘘がつけない。ついたところで、心の内を全て見透かされているようで何も言い返すことができなかったのだ。
傑がタイミングよくビールを零してくれたおかげで、なんとか会話の流れを断ち切ることができたが、本当にそれ以降の自分の行動が思い出せない。
『どうか醜態を晒していませんように。』
それだけを願い再び布団に潜り込む。寝て忘れてしまおう。
それなのにそう思ったすぐあとには、私はどうしたいのだろうか、とか、私の気持ちや想い、考えは?などと忙しなく自分の中で応答のない質疑が飛び交う。
再び起き上がり、ワシャワシャと髪を乱暴に掻きむしる。むしゃくしゃとした気持ちと比例するように、髪もぐちゃぐちゃになった。うわーーーーーっとお腹の中から大きな声も出した。
『ダメだ。』
こんなんじゃ、ダメだ。
でも考えても考えてもなかなか答えは見つからなくて、居てもたってもいられなくなった私は部屋を飛び出した。
走って向かった先は、トラックのある校庭と呼ぶには広すぎる場所で。走って走って走って、ひたすらにトラックを走った。狂気の沙汰じゃないのは重々承知だ。こうして何かに打ち込んでいないと、自分にかけた呪いに負けてしまいそうな気がしたのだ。
『っ・・・、まだっ・・・っ、もっと・・・、』
ひたすらに走った。
もっと遠くへ、もっと先へ、一歩でも多く、そう思いながら地面を蹴った。