第2章 体術体術ときどき座学
『うわっにっが!!なにこれ。』
「やっぱりガキにビールはまだ早かったか。」
「よく言うよ。キミだってびっくりするくらいの下戸じゃないか、悟。」
「ほれ、こっちのチューハイのがお酒初心者の花子にはちょうどいいんじゃない?」
硝子に手渡された缶チューハイを花子はゴクリと飲む。ちょっと苦かったのか、眉間に皺を寄せる彼女は、子供っぽくてかわいらしかった。
はじめこそツンケンしていて、悟とも一発触発のような関係が続き、馴染むまでに時間がかかるかと思いきやそれは単なる杞憂に終わった。寧ろ女子が一人増えたことで、硝子も変わったし、私たちの関係も良いものに変化したと思う。
ただでさえ同級生が少ない分、私たちは仲間意識が強いと、個人的には思っている。もちろんこんなことを口にしたら、悟を筆頭にバカにされることは明々白々なのでコイツらに言うつもりは毛頭ない。
「何ニヤニヤしてんだ?もう酔ったのか?」
「いーや、何だか楽しくてね。」
『それが俗に言う酔ってるってことなんじゃないの?』
それもそうだね、と私が微笑めば花子の頬も同じように緩む。よくよく冷静になって考えると、華奢ですぐに折れてしまいそうな(実際初めのうちは何度か骨折させてしまったが。)花子をぶん投げていることに罪悪感を感じた。
しかし万年人手不足の呪術界。
花子にも早く第一線で活躍して欲しいという思いから、夜蛾に言われた通り、手加減無しで私も悟も鍛錬に付き合っている。
「花子って、超貧弱でクソがつくほど弱いけどさ、」
『なんで、急に悪口?』
「いや、根性だけはあるなーって。」
『え、』
まさか悟に褒められるなんて1ミリも思っていなかったのか、花子はポカンと口を開けて、そこからは間抜けな声が零れた。
「珍しいじゃないか、悟が誰かを褒めるなんて。」
「いや、褒めてるっていうか単純にすげぇなって。」
『・・・。』
「そもそも強い志がなきゃ、呪術師なんてやってらんねぇけどさ。花子の中にもそういうのがあるのかな?って気になっただけ。」
だから別に褒めてる訳じゃねぇからな、なんて口を尖らせる悟の目がほんの少し泳いでることに気付けたのは多分私だけだろう。