第40章 11人目のストライカー10
貴方side
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榊「おまたせしました。毛利先輩」
榊さんの背後には、別の男の人が立っていた
榊「ご紹介します。こちら、杯戸町にある町工場の社長さんで、チームスポンサーの会長を務める本浦圭一郎さんです」
本浦「本浦と申します。ご高名はかねがね……」
小五郎「これはどうも」
榊「本浦さんは先輩の大ファンで、この会場に来ていると伝えたらぜひお会いしたいと…」
小五郎「そうでしたか」
小五郎さんは、まんざらでもない顔で本浦さんを見る。
けど、その目はどこか寂しげな印象を与える
本浦さんは、ジャケットの内ポケットからスマートフォンを取り出す
本浦「毛利さんにどうしても見ていただきたい写真がありまして…」
小五郎「私に?」
本浦「ええ、これをぜひ…」
と本浦さんは一瞬険しい表情をして、スマートフォンを差し出した
歩美「歩美たちにも見せてー!」
歩美ちゃん達や、蘭も見に行く為私も寄りにいく
スマートフォンの画面には、サッカーボールを懸命に追って走るユニフォーム姿の男の子が写っていた
その左腕には、赤いリストバンドがつけられている
小五郎「この写真は…?」
本浦「息子の知史です。他の写真も見てやってください」
小五郎さんは、画面を指でスライドする、同じくボールを追う知史の姿が何枚か続いた
小五郎「楽しそうでいいですな~」
蘭「今日は、息子さんも来てるんですか?」
榊「…それが…実は、知史君は今年の八月、病気で亡くなってしまったんです」
思いがけない言葉に、私達は驚いて本浦さんを見た
本浦「…元々、知史は持病があって、医者から厳しい運動は止められていたんです」
小五郎「では、この写真は…?」
本浦「どうしてもサッカーがしたいと言うので、榊監督に無理を言ってクラブに入れてもらったんです。その写真は、監督の厚意で一度だけ試合に出してもらったときのものです」
写真の中の知史君は、なかなかボールに触れるチャンスがないようだったが、最後の方でようやくドリブルをする姿とシュートをする瞬間の姿が写ってる
歩美「すごーい」
光彦「サッカーうまかったんですね」
歩美と光彦が声を上げる