第33章 11人目のストライカー3
貴方side
元太「行くぞ、光彦!」
二、三歩下がった元太君が右足を大きく後ろに振り上げ、つま先で力任せにボールを蹴る
光彦「うわっ」
ボールは光彦君のはるか頭上を飛び越え、革ジャンを着た青年の方へまっしぐらに向かった
ぶつかる……!と走ろうと思った瞬間、その人は振り返り、飛んできたボールを胸で受け止める
そして右足、もも、肩、頭を使って巧みにリフティングをしてみせた
3人「ワア……!」
青年の華麗なリフティングに、歩美ちゃん達は声を上げる
歩美「コナン君みたい!」
歩美ちゃんの声に、コナンと哀が振り向く
?「おまえら、サッカー好きか?」
3人「はい!」
光彦「……でも…なかなかうまくならないんです」
歩美「難しいよね、サッカーって」
元太「いつもふかしちまうし、走んのは苦手だしよ」
?「ぜいたく言うな。元気な体でサッカーできるだけ、幸せなんだぞ」
元太「でもよぉ……」
?「よしっ。オレがコーチしてやるよ」
その人は、ボールを元太君にパスした
コナン「あの人、どこかで……」
貴「知ってる人?」
聞こうとしたと同時に、「ワーッ」と子どもたちの歓声が聞こえてくる
声のする方を向くと、入り口の前に一台のバスが止まり、子どもたちが駆け寄っていく
ボールを蹴ろうとしていた元太君たちも振り返ってバスを見つめた
歩美「Jリーグのバスだ!」
光彦「選手が来たんですよ」
元太「行ってみよーぜ!」
光彦「待ってくださいよ、元太君!」
その人は、別方向に左足をかすかにひきずって歩きながら歩いていく
コナン「そうか、あの人…」
貴「わかる?」
コナン「雰囲気は大分変わったけど、間違いない。奇跡のワントップ、中岡一雅さんだ」
哀「奇跡のワントップ…?」
コナン「三年前、杯戸高校を全国制覇に導いたのが中岡さんだよ」
貴「え」
コナン「スピリッツへの入団も内定して、将来のエース候補と言われてたけど…決勝戦の一か月後にバイクで事故を起こして、それっきりサッカー界から姿を消してしまったんだ…」
貴「けど、ここにいるってことは…」
哀「まだサッカーに未練があるかもしれないわね」