第9章 どうしようもないんだ(D.T)
「そういや名前を聞いてないわ」
乾杯しようと缶を開けながら聞いた。彼女は勢いよく立ち上がり
「柳あみと申しますっ」
と激しい自己紹介をしてくれた。これまたかわいい。
「柳ちゃんね。よろしく。乾杯」
吹き出しそうなのを堪えながら缶を合わせる。
「お近づきになれて光栄です!乾杯っ」
ちびりと口をつけると、ぱぁっと明るい顔になった。
「おいしいです!」
「そりゃよかった。新しい扉を開けた瞬間に立ち会えて俺も光栄。」
「…さすが常田さん、こんな時も言葉のチョイスが秀逸ですね…」
「なんじゃそりゃ笑」
俺がビールを3本飲む間に彼女がカクテルを1本飲み終える頃、俺は頭を抱えてしまった。
……いい子だ……
きっといいご家庭で愛情をたっぷり受けて育ったんだろう。
思いやりもあり価値観も合う。もっと知りたくなってくる。過去の男の事など。