第7章 娘の担任(K.A)
店の鍵を開けて入ろうとした時、背後から聞こえる走ってくる靴音。
振り返ると同時に店の中へ押し込まれた。
「きゃっ、え、なになに」
「あみさん、ごめん少しだけ」
ドアは閉められ、私は彼に抱きしめられていた。
若いママさんたちにもみくちゃにされていた彼からはいろんな香水の香りがする。
どうやって逃げて来たんだろう。ふふ、とつい笑ってしまった。
「さくらちゃんが、今だ行ってこいって、」
走って息があがったまま、私の前に跪いた。
そしてスーツの内ポケットから取り出したケースを開けながら
「結婚してください。さくらちゃんごと俺にください。」
そこにはダイヤのリング。
もう担任と保護者ではないけど、即答するには気持ちが追いつかない。
「…おばちゃんです、私」
「俺もおっさんです」
「先生の親御さんがなんておっしゃるか、」
「俺の初恋知ってます。再会できた事も話してあって応援してくれてます。断る理由はそれだけですか?」
彼は立ち上がり私の左手の薬指にリングを通しながら
「最高の味方に背中押されて来たんです。もう諦めて俺のものになってください」