第4章 穏やかな彼(K.A)
「私が初めてだったから、すごく優しくしてくれてるって、わかってるんだけど、もっと、好きなようにしてもらっても、えと、なんていうか、ああもう、どうしよう」
あんなに覚悟を決めて話し出したのにもうこんがらがってしまった。絶対嫌われた。呆れさせたに違いない。だって彼の抱き方が不満だって言ったようなものだから。男性にとってはこんな侮辱はないだろう。
沈黙がつらい。あぁ、こんなことで大好きな彼が離れて行ってしまうのかな…。
「…君はもう、まったく」
ほら、怒ってる。もうおしまいだ。時を戻して松○寺さん!
「俺が本気で抱いたら…きっと、幻滅されると思ってるんだ」
えっ。と彼を見た。こんなに辛そうな彼を初めて見た。幻滅されるような抱き方って、例えば…?
「…痛い事したり?されたり?」
「いや、そんな事しないよ。」
「縛ったり?」
「そんな事…あ、少しくらい、軽く?してみたいかも…いやいや!しないよ!嫌がる事はしたくない!」
ああ、優しいんだから。私から彼に抱きついた。
「あなたの事、いろいろ教えてほしい。どんな事が好きなの?私にしてもらいたい事、ある?」
顔が熱くて、火が出そうだけど、この人を離したくない。
「……ほんとに嫌な事は本気で嫌がって。抵抗して。叩いてもいい、俺を止めて。」
彼の切長の目に、炎が宿った気がした。その瞬間、私からキスしていた。彼もきつく抱きしめてくれる。舌を絡めながら服を脱がせあった。