第4章 穏やかな彼(K.A)
彼は、それはそれは大事に私を抱いてくれる。少しでも嫌がる事はしない。正直、物足りなさを感じていた。
彼も何か我慢しているのではないかと思っている。もっと、好きにしてくれていいのに。
男性は彼しか知らないけど、これから先、他の人に抱かれるなんて想像できない。彼と添い遂げたいと思うからこそ、本音でぶつかっていこうと思った。
「ね、あっち行こ?」
彼を寝室に誘った。いつもは彼主導で進められるので、彼も少し驚いている。
寝室に入り、ベッドに座って切り出した。
「話、したいの」
「…別れ話?」
「違う!違う!えと、大好き、だから、あの、もっとあなたを知りたいし、私の事も知ってほしいの」
小首を傾げる彼もかわいい…。がんばれ私!勇気を出すんだ!
「…恥ずかしいんだけど、いつも、優しく抱いてくれて、ありがとう」
彼は黙って聞いている。うう、ほんとに恥ずかしい。
「あなたが、何か我慢してるんじゃないかなって、思ってて」
うつむく私の視界には、もじもじと手遊びをする自分と、体半分を私に向けて話を聞いてくれている彼の足が見える。
私の腰に回された彼の手が、微かにぴくりとしたのを感じた。