第4章 穏やかな彼(K.A)
鍋焼きうどんができた頃、彼が到着した。
同じような服ばっかり買っちゃうんだよね、と言っていた彼は今日も見たことあるようなシャツだった。
三角に生えたあごひげは長くなったら切るくらいで整えなくてもいいらしい。
「遅くにごめんね」
と抱きしめてくれる。
「ううん、お疲れ様。うどん食べる?」
「わっ。嬉しい。食べる」
出来立てをはふはふ言いながらおいしそうに食べてくれる。かわいいなぁ。
「しばらく時間取れそうにないんだ」
食後、ソファでまったりしながら彼が言った。
「そっか…」
理解ある彼女を演じてはいるけど、寂しさははんぱない。ほんとなら仕事なんかやめてついて回りたい。
私を後ろから抱きしめていた彼の手が、する、と服の中に入ってくる。首筋に顔を埋めてくんくんと匂いを嗅いでる。
「いい匂い…」
耳にちゅ、ちゅ、とキスされるとぞくぞくして体がぴくんと反応してしまう。
実は今夜は、覚悟を決めていた。彼と、もう少し深くわかり合いたいと思っている。