第3章 奇抜な彼(Y.S)
「すげえ、しっかりしてて、優しくて、」
彼の話を聞きながら花を選んでいく。
「かわいくて…めし、美味くて」
つい、ふふ、と笑いがこぼれてしまう。彼も大事な奥様を思い浮かべながら、最初の固い表情より幾分か和らいで見える。
「三味線うまくて、」
意外な言葉にえっ。と声を上げてしまった。
私の反応ににやりと笑い、
「三味線のプロなんすよね。奥さん」
これはイメージをひっくり返さないと。
椅子にかけてもらい、コーヒーを出した。私もフラワーアレンジのプロとして、先入観にとらわれてはいけない。
はた、と気がついた。
「プロの方なら、検索したらお顔を拝見できますか?」
「…そうっすね。できますけど…」
「あっ…ご迷惑でしたら」
「いや、じゃあ、写メ、見てください」
と、スマホを取り出し画像を見せてくれた。
結婚式だろうか、黒髪のかわいらしい女性の隣には、目の前の少年のような彼が正装して微笑んでいる。
「わかりました。」イメージができあがった。