第2章 子犬な彼(S.I)
2件目のバーでは大人を強調しようとバーボンなんかを飲んでみる。
店を出る時、頭ははっきりしてるつもりなのに足が言う事を聞かない。…情けない事に彼に支えられてタクシーに乗り込んだ。
乗ったと同時に酔がまわってきた。彼はドライバーさんに行き先を告げているけどなんて言ったのかわからない。
「着いたら起こしますよ」の言葉に甘えて彼の肩に頭を預けて目を閉じた。
タクシーの揺れが気持ちよくていつのまにか彼の太ももを枕にしてしまっていたようで「着きましたよ」と肩を揺すられてもなかなか起き上がれなかった。ドライバーさんと彼のやり取りを意識の遠くで聞きながら、起きなくちゃ…と思うけど彼の太ももが気持ちよくて。
ふわふわとして気持ちがいい…
力強い腕に抱えられている。優しくふわりと降ろされた。ベルトを緩められ、「キツくないですか?」と囁かれる。
服の中にするりと大きな手が入り込んでブラジャーのホックを外した。不思議といやらしさは感じない。
「楽になったでしょ?」
本当に楽になった。そして喉の渇きに気がついた。
「お水…」
「はいはい」
ここはどこだろう。自分の部屋ではない。目を開けて確かめればいいんだけど、目が開かない。
「どうぞ」
と彼が背中を起こしてくれて、口元にペットボトルをつけてくれたのでごくごくと冷たく冷やされた水を飲んだ。
ふぅ、と一息ついてやっと目を開けて周りを見た。物は多くなくて整頓された部屋。私は彼に支えられて大きな窓際のベッドの上にいた。
「すいません、俺んちの方が近かったんでとりあえず」
そう言ってもう一度私を寝かせてくれた。
「よかったらこのまま寝てください。明日は休みでしょ?俺はあっちのソファーで寝るんで。」
そう言って立ち上がりかけた彼の服のすそをつかんでしまった。
いつも陰で支えてくれている彼を意識しないのは難しかった。飲みに行く約束を先延ばしにしていたのは、こんな気持ちになることがわかってたから。彼が好意を持ってくれているのも気付いてた。
「何をしてるか、わかってるんですか?」