第11章 俺のだから(D.T)
ツアー直前はお互い忙しく、会うことのないまま全国ツアーに突入した。
携帯ではやり取りしている。
「元気?」「お疲れ様」「がんばって!」
今はこれだけで満足だ。欲は言わないでおこう…と思っても、視界の隅にチラチラと入り込むポニーテール…
ただ距離は遠い。雑用を一生懸命こなしているようだ。
数回目が合ったような気がする。小さく手を振ってくれた気もする。
ステージから飛び降りて抱きしめに走りたい衝動にかられる。
昼飯時の楽屋通路、スタッフが行き交う中俺の意識は1点に集中した。
壁際であみを通せんぼする理。距離が近い。あみは少し困ったような、貼り付けたような笑顔。あんな顔は見たことがない。
人をかき分け、まっすぐにそこに向かう。あみの顔が少し歪み、泣きそうな顔になる。その瞬間、俺と目が合い、ふ、と表情が緩んだ。
理の肩を引っ張りあみの身体を引き寄せる。
「こいつ、俺んだから」
豆鉄砲をくらったような理の顔。そしで周りにいた大勢のスタッフもまったく同じ顔をしていた。
「つ、つねたさん…どうしましょう…」
我に帰り、彼女を見下ろすと耳まで真っ赤にして両手で顔をかくしてしまっている。
和輝と遊がスタッフをかきわけやってきた。
「理、そういう訳だから」
「大希!漢じゃん」
「皆さん、こうなりましたけど彼女の仕事に支障はないのでいいですよね?
変わらずお仕事してくださーい。はい!解散!」
和輝の号令で(もっと見ていたそうだが)ばらばらと散らばり出した。
そして残された俺たち5人。
「…えーと、理よ、悪いんだけど…」
「…あの時とあの時とあの時も、俺にあたり強かったのってこゆこと?」
「あー……そう、かな」
「なーーーーんだよ言えよーーーーー知ってたらちょっかい出さねっつの!」
和輝と遊に「まあまあ」となだめられ理は2人に連行されて行った。