第2章 ふわりととけた
「おいユウ!!早く!」
「ごめんエース、せっかく助けてもらったけど私は残らなくちゃ」
「何言ってんだよ!こんなん絶対勝てねーだろ行くぞ!」
エースは顔を引きつらせたまま私の腕を引っ張って無理矢理連れて行こうとする
「ユウ!あれが離れているうちに早く行かないと!」
「だめなの!!!」
叫びながら手を無理やり振り解こうとするが、力でエースに勝てる訳もなく離れることはできなかった
エースの顔を恐る恐る見ると、怒りと恐怖と悲しみが折り混ざった表情をしていた
「わかった、もーいいわ。いくぞデュース」
こんなやつもう知らね
そう言うとエースは私の手をそっと離した
せっかく助けてくれたマブの手を振りほどいてしまった
裏切ったと思われても仕方がないと
ただ、少しだけ心が痛くなった
それでも私はこの生物を置いて逃げることなんてできなかった
「いや、僕は残る」
「はあ!?お前まで何言ってんの?」
「ユウ一人置いて逃げるなんてできない」
デュースはそう言うと私の横にスッと移動してきた
先程までの焦りはどこへ行ったのだろうか、覚悟を決めたような表情をしていた
「デュースは危ないから逃げて」
「ユウは魔法が使えないんだ、一人置いていくことはできない」
こういった時のデュースはとても頑固だ
きっと私の話もエースの話も聞いちゃくれないだろう
「あーもういい、オレ一人でも逃げるかんな」
エースもその事を悟ったのだろう
無謀な友人と自分の命を天秤に掛けたら誰もがきっとその選択をすると思う
「うん、エースまた明日ね」
エースは返事をせずに走り去って行った