第43章 3度目のバレンタインデーは…前編 お相手:煉獄杏寿郎現パロ
私がそう提案をすると
目の前の杏寿郎は驚いた顔をしていて
えっと そんなにホテル代出しますって
言うのっておかしかったのかな?
ほら 今はコロナだからさ
旅行らしい旅行にも行けないしさ
このご時世だから 結婚式らしい式とかも
出来そうにないからさ
毎年だったら 旅行にって充てていた
冬のボーナスだってまだそれなりに残ってる
「えっと、ダメ…だった?」
杏寿郎が何も言わないので
そう答えを促してみるが
彼からの返事はなくて
そこ代わりに何かを考えている様で
「なら、…俺から提案したい事があるんだが」
そう言いながらもダイニングのテーブルに
杏寿郎が座ったから
伏せて置いていたグラスに何を注ぐのかと
ウェーターサーバーを指さして
それからみくりが冷蔵庫を指さした
明日は休みだから
ちょっとぐらい飲んでもいいだろうし
みくりが普通のグラスとワイングラスを
持ち上げて杏寿郎に意見を伺う
そうすると考え事をしながらも
あっちと杏寿郎が食器棚にある
背の高いグラスを指さしたので
みくりがそれに頷いて
食器棚からその背の高いグラスと
冷蔵庫の中に入れていた
瓶を取り出して栓を抜くと
その瓶の中の黒い液体を
背の高いグラスに注いで杏寿郎の前に置いた
「はい、杏寿郎。
今日はビールの気分だったの?」
「ああ。それも前に買って
しばらく飲んでたが、置いたままで
冷蔵庫の中にあったまんまだったからな」
「それよりも、提案って?」
「それなんだが、やはり男としては
女性にそれを全て世話になると言うのは、
どうにも面目が立たない様に感じてな。
君のその気持ち…を無下にする様で
忍びなくもあるのだが…」
そこまで聞いて みくりは
違和感を感じた提案ではないよね?これって
「え?でもホラ、バレンタインだし…
こっちからあげる日じゃない?」
「確かにそうかも知れないが…、
女性に支払いをさせるのは甲斐性のない
男のする事だと俺は言っているんだが?」
そう言ってアイルランド製黒ビールの
グラスを傾けて喉を鳴らして飲むと
その様子をみくりが見ていて
「黒ビール美味しい?私は癖がある
感じがして苦手なんだけど…」
「ははははは。そうかもな。
コーヒーの様な苦味と香ばしさがあるぞ、
これはこれで、味わい深いがな」