第42章 スルタンコラボ企画 上編 お相手:冨岡義勇
義勇とみくりが
王都に差し掛かる頃には
すっかり日が落ちてしまって
真っ暗になっていた
「王都に入ったには入ったが……、
随分と時間が掛かってしまったな。
まぁ、あの一団と行動を共に
していたら。王宮へ戻るのは
明日の夕方とかになって居ただろうが……」
「私、知りませんでした。
この国は、こんなにも大きな国
だったのですね」
生まれも育ちも草原だった
みくりには
目に映るもの全てが初めて見る物で
「あそこにある、果物も
食べた事の無いものばかりですし。
あちらのお店に並んでいる魚も
名前も知らない物ばかりです」
そう言って街道に立ち並ぶ
市場の店をみくりが指さした
「そうか、みくり。
何か気になる物はあるか?」
そう言って義勇が
果物の露店の前で馬を止めた
「え?えっと…あの、あれは?」
「ああ。あれか?
あれは南の海の近くの
背の高いヤシの木の実だ。
割って、中の汁を飲む。
すまん。そのヤシの実を
一つくれるか?今飲みたい」
そう言って露天商に硬貨を渡すと
「まいどあり。
ちょっと、待ってな」
ナタの様な刃物で
ヤシの実を割って
ストローを2本差すと
こちらに手渡して来て
義勇がそれを受け取ると
みくりにそれを差し出して来た
ふわっと香り立つ匂いは
とても甘い香りがするが
どうにも独特な癖のある匂いだ
「ココナッツは好みが分かれるがな。
飲んでみるといい。どうだ?」
恐る恐るそのヤシの実のジュースを
ストローで吸い上げると
キィンンンンッ……と
耳鳴りの様な音がして
自分の金色の目に
見た事のない 南国の風景が映っていて
「凄い、美味しいですね。
変わった匂いがしますけど、
ほのかな甘みがありますし、
面白い味がします。あの…、
義勇様も、お飲みになられますか?」
義勇に飲みやすい様に
みくりがヤシの実と
ストローを支えて義勇に
飲む様にと促した
「確かに、ヤシの実のジュースは
一人で飲むには、量が多すぎるな」
そう言って
みくりが差し出して来た
ストローに口を付けて
ゴクゴクと喉を鳴らして
ヤシの実のジュースを
義勇が飲んで
「美味い…な」
そうボソッと呟くと
僅かに顔を綻ばせる
「はい。美味しいです」
「いつか…、見に行くか?」