第42章 スルタンコラボ企画 上編 お相手:冨岡義勇
その小野寺の言葉に
ぴくッと店の主人が反応して
片眼鏡をクイッと持ち上げて
小野寺の顔をじっと見て来る
「そうか、アンタのその金目…か。
これは、売りもんじゃねぇが
アンタのその目がこれを見つけたんなら
これがそれの運命だったのかもな……」
そう言って 壁一面の引き出しに
立てかけられているハシゴを
スライドして移動させると
天井にほど近い場所にある
引き出しの一つを開いて
その引き出しの中から
同じ様に布に包まれた
大きさとしては 今までの石の
半分にも満たない様なそれを
取り出して懐にしまうと
「これを仕入れたのは、俺じゃない
俺の曽祖父…、ひいじいさんだ」
そう言って軋んだ音を立てている
ハシゴから店主が降りて来て
その古臭い包みを テーブルの上に置いた
「その、ひいじいさんからの
遺言でな。コレを必要とする者が
店に来たら、譲ってやれと
言われていた代物だからよ。持ってけ」
「そう言う訳にも行くまい、
主人も商売をしてるのだからな…。
これを代金としてお納め頂きたい」
杏寿郎が自分の腕の金の腕輪を外して
ゴトンとテーブルの上に置いた
店主がその腕輪を
片眼鏡の上にレンズを重ねて見ると
その価値を試算している様で
「極めて、純度の高い…24金製の
腕輪か…、この金の腕輪だけでも
かなりの価値があるが……。
この腕輪の、赤いガーネット…。
この赤の色…、ロイヤルレッド…。
この国では王家の赤だ……が?
それにこの刻印も、王家の印…」
「俺は構わないと言っているんだが?」
ふぅっと店主がため息を付くと
「盗品でないと言う事なら、
お代として頂戴させて貰っとくよ。
しかし、これの中を知らずに
こんな払いをしていいのかい?旦那」
俺を王家の人間と知りながらに
あくまで ここでは客と主人と言う事か
成程……
「彼女の目には、狂いはないからな」
「でも、私に見えたのは数字だけなので。
この中身は何なのか……私にも
知らないのですが…」
「小野寺。君のその目が
選んだ石だ、
君に必要な物なのだろうからな」
そう言って その王家の印の入った
腕輪とその中身の知れぬガーネットを
交換して その店を後にした
「さぁ、ここまで来れば
王宮はもう少しだ。急ぐとしよう」
ーーーーー
ーーー
ーー
ー