第42章 スルタンコラボ企画 上編 お相手:冨岡義勇
こんな人や馬車の行き来が多い
広いとは言えど街道で
あんな速度で走るなんて
無茶苦茶だし
「もう、あんな所まで行ってる」
これ以上 距離を離されたら
私だって追いつけない
それに 杏寿郎さんが走ってるの
この街道じゃなくて
高台の方の建物の方だ……
距離だけじゃなくて 高さまで
離されたら 追いつけなくなる
小野寺が馬の腹を強く蹴って
更に速度を加速させて
最大速度である 襲歩まで加速させる
襲歩で馬が走れるのは
精々 距離としては4~5キロ
時間としてはほんの5分程度
高台と街道で高低差があるが
後から追いかけて来た
小野寺が杏寿郎と並ぶと
「追いついて来たのか?
そんな速度でいつまでも走れる訳が」
街道の向こう側から
大きな石材を運んで居る馬車が見えて
「なら、追いつきます」
そう静かに小野寺が言うと
襲歩から 更に馬を加速させる
信じられない あんな速度で走れるのか?
いや 感心してる場合じゃない
あのまま 正面から
馬車につっ込むつもりか?
「すいませんっ、荷台、
お借り致します!」
ぶつかると思った時には
もう彼女と彼女の乗った馬は
そこには居なくて
その石材を乗せた
荷台の上に飛び乗って来たと思えば
その荷台を足場にして
杏寿郎の居る高さに飛び移って来ると
杏寿郎の先へとストンと着地した
「追いつきました。杏寿郎さん。
一体、どちらへお急ぎに?」
「驚いた。草原は平地ばかりではないのか?」
「そんな事はありませんよ。
馬に乗ったまま、
崖を走る事もありますから」
そう言って 小野寺がニッコリと
杏寿郎に笑顔を向けて来て
「君の弓の腕は俺は知って居るし、
その馬捌きも見事だ。
君は俺の、勝利の女神になりそうだな!
君が俺の為に犠牲にしてくれた
その全てを、俺が補おう。
その手を血で汚すだけの、対価を
俺は、君に返そう。だから…
俺と共に生きてくれ。小野寺」
「はい。勿論にあります。
杏寿郎さん。私はそのために
今、ここに居るのですから」
「夕陽…を、贈りたいと
そう思ったんだ。君に」
沈んで行く夕陽を指さして
杏寿郎が言った
「地平線に沈む夕陽の色をした、
ガーネットをな。今はまだ
約束の深紅は贈れないが…」