第42章 スルタンコラボ企画 上編 お相手:冨岡義勇
「どうして?」
尋ねた事をそのまま
オウム返しに義勇が返して来て
「思ったのだが…、
馬乗れるんじゃないか?」
「へ?でも…私には…馬は…」
「それは、その時に乗れなかっただけ…
じゃないか?こうして、一緒に
乗れば分かる。馬が走りやすい様に
自分の身体を支える体勢も取れてる。
自分でも、自覚…が無いのか?
もう、俺が思うにお前は乗れる…と言ってる」
馬は 小さい頃に
小野寺と一緒に乗る練習を始めたけど
小野寺はすぐに乗れる様になってしまって
あれよあれよと言う間に 上達してしまって
父様の兄様達も すぐに憶えてしまうから
ドンドンと指導が熱心になっていって
ぽつんと私だけが
取り残された気分になって
そんな時に母様が
じゃあ刺繍を教えてあげるって
私に刺繍を教えてくれた
私は こんな性格だから
馬に乗る時に怖がってしまって
足で馬の身体を締めてしまうから
お前の乗り方じゃ馬にストレスが掛かるって
そう言われても やっぱり
落ちたりしないか不安で
乗る度にそうなってしまって…
馬に乗る練習もすぐにしなくなった
自分は馬には乗れないんだって
そう自分で決めつけて…しまっていたのかな
「ああ、話を遮っていたな。
何が、言いかけていた?」
「どうして、冨岡様は、他の
お妃様をお娶りに
なられなかったんですか?」
「俺は、相応しくないからだ…。
俺の妻になっても、
不幸になるだけだからな。
俺は、王家の人間に相応しくない
人間だ。この髪の色も目の色も…
王として、望まれる資質も何一つ…俺は。
持ち合わせてなど、居ない…」
馬の手綱を握ったままで
正面を見据えたまま
そう静かに義勇が言った
その言葉の意味を噛みしめる
この人はずっと…今までの人生を
それで悩んで生きて来たのだろうか
劣等感…と自己否定…
「だが…、俺が生まれてこの方
ずっと、忌み嫌っていたこの髪も
目も。綺麗だと、…言っただろう?
取り繕う、へつらう訳でもない
ありのままの言葉で、…俺ですらが
それをずっと、拒んでいたのに。
俺ですら、受け入れられなかった俺を、
受け入れて、その上、褒めたんだからな…」
「こんな沢山、お話になられる
冨岡様は、初めてかも知れません。
私、聞きたいです。もっと…知りたいです」