第42章 スルタンコラボ企画 上編 お相手:冨岡義勇
荷物は後から家来の人達が
宴の会場の荷物と一緒に
運んで来てくれると言っていたので
家族との別れを済ませて
周囲を見回すと
義勇が白い馬に乗ってこちらへ来て
馬の上から 手を差し出して来たので
「あ、えっと…」
引き上げて貰わなくても
自分で上がれると言おうとしたのを
ツンと一樹が肘で突いて来て
「甘えておくんだ」
とみくりにしか聞こえない声で
そう言って来たから
その言葉の通りに義勇に
引き上げて貰って彼の前の座った
一緒に馬に乗るのだから
背中に彼の義勇の体温を感じて
鼻の先を 男性にしては薄い
体臭ではあるが 微かな
彼自身の香りが掠めると
ドキドキと自分の胸が騒ぎだす
家族が一列に横に並んで
私達の出発を見送ってくれて
その姿が見えなくなるまで
こちらも大きく手を振った
そのまま 草の大地を進むと
段々と草が少なくなって行って
大地に砂がちらほらと混じり始める
「この辺りと違って、王都は砂の土地。
気候も、環境も草原とは違う。
草原の様な激しい寒暖差もないし、
どちらかと言えば、常夏だ。
同じ陸続きの同じ国だが、東と
西でも、そして北と南でも…生活の
様式や、環境、風習も異なる」
「昔、父様に聞いた事があります。
元々は東西南北の4つの国であったと。
始まりの王である、スルタンが
4国を纏め、今のこの国を建国したのだと」
西の空が少しずつ
赤く染まって行くのが見えて
「少し、急ぐか…。日が落ちる前に
せめて街道までは出たいからな。
荷物は、明日の朝になるかもな。
なにせ、あの一団だ移動には時間が掛かる。
生活に必要な物は後宮にもある」
「後宮…では当然、小野寺とは」
「本来ならば、一緒にはなり得ないが
2人で1つなのだろう?煉獄も
俺もその辺りは合意済だ。
お互いの後宮を中庭で繋いである」
「会えるって事…?」
「ああ、会える。それに
俺も煉獄も他に妃が居ないし、
誰も文句の付けようも無い」
「へ…?」
それって 他に奥さんが居ないって事?
「後宮には、庵が幾つかあるが。
どこも空いているからな、好きな庵を
使ってもいいし、移動してくれてもいいが」
住居となる庵がどれも空いてるから
好きに使って良いと言われて
みくりが目を丸くさせる
「あの…、どうして…」