第11章 春が来りて 後編 お相手:冨岡義勇
みくりが湯を使って
義勇の待つ寝室へと向かう
どうしよう どうしたらいいんだろう?
これからする事に関しては
年上の女性の隊士から聞いたり
それこそ
本で見たりしたことぐらいしか知らない
どんな事をするかの
一連の流れみたいなのは
把握しているつもりだが
実体験が無いのだ
知識でしかない
「義勇さん、お湯、頂きました」
と声を掛けて襖を開くと
義勇がこちらを見て
それからふっと笑った
あれ?何で笑われたんだろ?
「髪……、洗ったのか?」
そう言われて
そうなのか
そうする時は
髪 洗わないんだ
知らなかったと感心してしまって
「俺が湯を使ってる間に、乾かすといい」
そう言われて
義勇がお湯を使いに行ってしまって
とりあえず
髪を乾かしながら
義勇が戻ってくるのを待った
しばらくすると
義勇が風呂を終えて寝間着で戻って来て
居住まいを正して
ふたりで布団の前に向かいあって正座すると
「不束者ですが…、よろしくお願い致します」
と畳に指をついて
みくりが深く頭を下げた
まるで稽古でもつける様だなと
その様子を見ながら 義勇は考えていた
「今なら、戻れるが……いいんだな?」
再度 念を押すようにして確認されて
みくりが頷くと
ポンと頭に手を乗せられて
そのまま撫でられる
「もう!そうやって、
子供扱いしないで下さいっ」
そう言いながら不満そうに頬を膨らませるのも
見ていて愛らしくて仕方ないのだが
「怖いか?」
身体一つ分だけ距離を詰めて
義勇がみくりに尋ねた
「少し……ばかりは」
そっと肩に手を当てると
小さく震えているのがわかる
「出来るだけ……、優しくする」
そう言って
そっと頬に口付けを落とされる
その唇も とても優しくて
優しくすると言った言葉も
口調もとても 優しくて
これからする事に
期待してしまって 仕方ない
私の 知らない世界……
怖いと思う気持ちがないわけじゃない
でも ずっと
義勇さんにそうされたいって思ってた