第42章 スルタンコラボ企画 上編 お相手:冨岡義勇
連れて行く羊の数が多いから
一樹と翔も悠斗に同行するとの事だった
三人を見送って
今日もお客さんが沢山来るだろうからと
菜々緒が2人の弟達を連れて羊達の世話に
出てしまって
広い いつもなら賑やかなゲルに
みくりと小野寺と
父親の3人だけになってしまった
しーーーーん と沈黙が続いて
どうしよう?
何を話したらいいんだろう?
「みくり、小野寺
お前等は俺の、自慢の娘達だ。
王家に嫁ぐ事、気負う必要もねぇ」
ぽん ぽん と
それぞれの頭の上に大きな手が乗って
ガシガシとラクダの頭でも
撫でるかの様にして撫でられてしまった
「もう、父さん止めってって」
「ラクダじゃないからっ」
「こんな日が…来るんだな…、
沙羅にも…見せてやりたかった…。
お前らがあの、衣装を着る所…」
「父さん…」
父親の口から
亡くなった母親の名前が出て来て
つい しんみりとしてしまった
「これを、お前らに…
本当なら、左右に結い上げて付ける物だが」
そう言って箱から取り出したのは
婚礼の衣装に合わせる簪で
左右が対になっている物だった
「これは、沙羅が
婚礼の時に付けていた物だ。
お前らは双子だ、2人で一つ…。
片方ずつになるが…、それに似合いだろ?」
そう言いながらその簪を
自分の左右の手に一本ずつ持つと
みくりと小野寺の前に差し出した
それぞれがその簪を父親の手から受け取り
ギュッと自分の手に握りしめて
その胸に抱きしめた
「だが、これは、お前たちに
やるんじゃない。預けるだけだ。
萌香が結婚する時にはちゃんと
返してもらうからな!」
あくまで 沙羅の婚礼の簪は
私と小野寺に預けるだけだと
父親がふたりに言って来て
「うん、分かった。萌香が
これを挿してお嫁に行くその日まで」
「この、簪は、私とみくりで
大切に預かって置くから!
任せて置いて、父さん」
ふたりがその父親の言葉に
力強く頷きながらそう答えて来て
そのふたりの答えを聞いて
父親の方もまた満足そうに頷いた
それからは
草原の遠い場所に居る
親戚がお祝いをしに来て
訪れた女性達が
2人の婚礼の衣装に刺繍をしてくれた
来客が途切れた合間に
刺繍が足された婚礼衣装を
ぎゅっとみくりが自分の胸に抱いた