第10章 春が来りて 前編 お相手:冨岡義勇
「煉獄、みくりは俺の継子だ。
勝手な真似をするな」
といつもの小さな声ではなくて
ハッキリとした口調で言われて
その声の方を向くと義勇が立っていて
「そうか、なら俺も、
納得出来うる答えが欲しいがな?冨岡」
煉獄が納得が出来る答え
みくりが俺の継子だと言う事だけでは
納得が行かないと言う訳か……
「煉獄」
「何だ?」
「ひとつ聞きたい事がある…本気か?」
と義勇が淡々とした口調で聞いて来て
「ああ、俺はいつでも本気だが?」
と煉獄もいつもの口調で答えた
「みくりから、手を…離せ。
それから……、俺も、本気だ」
「冨岡?」
「もう一度言う、みくりから手を離せ」
冨岡のどこにそんな力があるのかと
思うほどの強い力でぐっと手首を掴まれて
引きはがされる
「彼女に誰かが触れるのは、
不快なようにあるが……、君が悪い」
「俺は……、悪くない」
すっと煉獄が立ち上がると
さっきまで酔っていたのは嘘かの様な
すっきりとした顔をしていて
「宇髄、もういいぞ、帰ろう」
と宇髄に向かって声を掛けて
「俺はもうちょっと、見たかったがなぁ~」
と煉獄の言葉に宇髄が不満を漏らした
「邪魔をした!
後は当人同士で確認でもすればいい!」
煉獄の言葉に宇髄がああと言う顔をして
「じゃあな、冨岡!頑張れよ~」
と軽い口調で言って ひらひらと手を振った
2人が屋敷を後にして
まるで
嵐が立ち去った後の様に
水屋敷の中はしんと 静まり返っていた
さっきの事を
冨岡さんに聞きたい
気持ちがあるのはあるのだが
どう聞けばいいのか 分からないでいた
「すまなかった」
と小さい声で義勇が謝って
「え、どうして冨岡さんが謝るんですか?
冨岡さんの所為じゃ……ないですから」
「いや、俺の所為だ。
俺がどっちつかずな態度を取るから…お前に」
確かめたいと言う気持ちが
自分の中で ふっと湧いて来て
その湧いて来た 感情が
ドンドンと自分の中で膨らんで来て
聞きたいと思ってしまって
止められそうになくて
「あの……」
とみくりが話を切り出そうとした時