第10章 春が来りて 前編 お相手:冨岡義勇
「俺が記憶している中で、冨岡、君が
継子を取るのは初めてのようにあるが……?」
煉獄が言う通り
俺は今まで 一度も継子を
取ることは無かった
それは 自分が
柱足りうる物だと思っていなかった
負い目があったのもあるし……
俺のような者が
指導するなどおこがましいと
考えていたからだ
だが……
たまたま任務で一緒になって
先生こそ違いはすれども
同じ水の呼吸を使う みくりに会った
彼女の使う 水の呼吸
同じ水の呼吸なのかと思うほどに
美しい……と感じた
例えるなら 清らかな
石清水の様な……そんな
流麗な剣だった
濃い適性を持つ彼女を
炭治郎が水柱になるつもりがないのなら
俺が彼女を 次の水柱にすればいいと
そう思って 継子にしたのだが……
「でもよ、若い男と女がひとつ屋根の下で、
何にもないとかないよな?教えろよ」
ひそひそと囁くように宇髄が
随分とまた野暮な事を聞いてきた
「俺は、そんな目的で
…みくりを継子にした訳ではない」
「そうか。なら、君は、
彼女にそう言う感情を抱いていないと
認識してもいい訳だな。安心した」
と煉獄が何かに納得したように言って
うんうんと頷いていた
一体何に 納得したと言うのか…?
「何故、煉獄が……、
それに安心する必要がある?」
俺がみくりを
師範と継子だと言うのに
彼女をそう言った
色目で見ている訳があるわけ…
グイっと煉獄が
持っていたグラスを一気に干して
「君にそのつもりがないのなら、
俺は遠慮しないが?いいだろうか?」
と煉獄が義勇に
お伺いを立てるかの様に聞いて来て
何が何やらますますわからないでいた
煉獄の言いたい事の意図が読めず
義勇が首を傾げて考え込んでいる内に
両隣で凄いハイペースで二人が酒を煽って
気がついたら酔い潰れてしまっていて
仕方がないので
一番近い
自分の水屋敷に連れて来たのだが…