第37章 スルタンコラボ企画 序章 お相手:冨岡義勇
まぁ それも当然だ
これは剣でどうこうできる
仕業ではないし
呼吸を駆使したとしても出来る
事ではないからな
微かに…だが
さっきの異様な気配をこの娘に感じる
この娘自身の気配の奥に微かにだが
地面に血が落ちていて
この娘の流した血の様だった
小さなその血だまりを作っている
怪我の元を義勇が調べようと
そのうつぶせていた身体を
抱きかかえて抱き起こし
自分の方へと向かせると
「目を…怪我してるのか?
オイ、お前。目を開けるか?」
何だろう…声が…聞こえる…?
誰?兄様達帰って来た…の?
スッとみくりが瞼を開くと
そこには月を背に背負って
私の顔を覗き込む
見たい事のない男性の姿があって
この人…誰だろう?
凄い…綺麗な顔してる…
すっとみくりが自分の手を伸ばして
義勇の頬に触れる
指先に触れたのは確かな体温で
そのあまりの美しい顔に見惚れてしまっていた
「お前、そっち側の目は?開くか?」
そっち側の目と言われて
顔だけじゃなくてその声も
何て素敵な人なのだろうと
ぼんやりとみくりが考えていると
そっち側の目?
「左の目だ、開けるか?
血が出てる怪我をしてるんだろう?」
そう言われて
みくりが自分の閉じたままの
左側の目の上に左手を持って行くと
ヌルヌルとした感覚が指先にして
そうか目を 使ったからだ
きっともう 私の左目は
母様の言いつけを守らなかったから
もう… 見えなくなっちゃったんだ
じわっと涙が目に浮かんで来て
そのままわあぁあああんと
自分の腕の中の娘が泣き出してしまったので
義勇はどうしたらいいのか分からずに
おたおたとしてしまって居て
「大丈夫か?痛むのか?」
痛むと聞かれて
みくりがハッとする
涙で目の所に溜まっていた
ヌルヌルしていた血が流れて
自分の視界がハッキリとして来るのが分かる
あれ?目…見えてる
痛くもなんともない
ムクッとみくりが自分の身体を起こして
「すいません。通りすがりの方、
目は何ともありません、
ちゃんと見えておりました」
そう言って深々と頭を下げて来て
その娘が顔を上げる
その閉じていた方の左の目を見て
義勇がみくりの左目を指さして
「お前の、その目…」