第37章 スルタンコラボ企画 序章 お相手:冨岡義勇
星の娘…と呼ばれる
金色の瞳をした星の落とし子が居るのだと
金色の瞳には万物の理が宿る
千里眼は勿論の事 先読みに至り
人の体内や 地面の下等を視れる
透視の能力…等 多岐多様に及ぶと言われるが
その存在はある意味伝説とも近く
この草原の地では
その存在は神格化されていると言われている
「だが、
この伝承は…ここで終わりではない」
ドンドンと馬を走らせる度に
血の匂いが濃くなっていくのが分かる
さっきまで強く感じていた
異様なまでの異質な気配も
俺から逃げるかの様に
その存在を薄めて行くのが分かる
間に合わない…か…
その薄れゆく気配に義勇は
自分の意識を集中させる
草原の先にゲルが3軒並んでいるのが
義勇の目に入って来た
ここだ…血の匂いと異様な気配の元凶は
意識を集中させて
義勇が周囲の状況を探ると
ゲルの中には数人の人の気配がするが
そこにあるのは 人の 気配だった
「中に居るのは…人だな…。
だと、するなら…こっちか」
家の裏手に 二つ 別の気配がする
生きている気配だが
血の匂いもそっちからだな
「ここからは、お前は無理そうだな。
待っていてくれ、潮」
義勇は馬から降りて
その場で待機するように命ずると
その家の裏手の方へと足を進めた
義勇の目に入って来たのは
目を見張る様な
そんな異様な光景だった
おびただしい血痕が広がっており
そこに転がっていたのは
恐らく ではあるが
狼 だったもの…だ
恐らくと俺が言ったのは
それが見るも無残なまでに
原形…を留めて居なかったから
雑巾か何かを絞った様に
何か巨大な力に絞り捩じり切られた
その 現状を目の当たりにして
直観的に悟った
これが あの異様な気配の仕業なのだと
そして…その狼だったものの奥に
人が2人 倒れているのが見えて
義勇がその倒れている人に駆け寄る
若い女だった
その身の下に庇っているのは
まだ幼い子供で
弟…なのだろうか?
「おい、大丈夫か?
お前、生きてるか?」
うつ伏せに倒れている女の背中を
義勇が叩きながら声を掛けると
うぅん…と小さなうめき声が漏れて
生きているのは分かったが
その女の右手にしっかりと握られた
懐剣には一滴の血もついて居なかった