第37章 スルタンコラボ企画 序章 お相手:冨岡義勇
ドドドドドドッと
複数の影がこちらへと
凄い勢いで迫って来るのが見えて
その向かって来る方角から
新しい血の匂いがする
だが…この血の匂い…は
「人の血……ではない…な」
「冨岡!!凄いぞ。見てみろ」
杏寿郎が嬉々とした表情を浮かべながら
こちらへと勢いよく向かって来る
白い塊の方を指さした
あの白い ふわふわとした塊
そのひとつひとつが
羊だと認識できたのは
その塊がかなり近づいた頃だった
杏寿郎が馬の手綱を引いて
二ッと笑みを浮かべた
その笑顔を見て義勇は嫌な予感がした
コイツがこんな顔をする時は
ろくな時じゃないと
知っているからだ
「冨岡。この羊の群れを止めるぞ!!
恐らくだが、この羊はこの草原の
遊牧民の家畜だ。大凡…この月夜だ。
狼にでも襲われて、
草原に散ってしまってるのだろう」
俺達はスルタンの言いつけで
予言者の言葉に従って
この草原の国のどこかに居ると言う
金色の瞳の娘を…探しに来たはずなのに
どうして 羊なんぞを
何が嬉しくてふたりして追い回せと言うのか
義勇がその端正な顔を歪ませていると
その義勇の顔を見て杏寿郎が
自らの顔を歪ませて
「冨岡、君の顔は整っているが。
そう言う顔をしてる時の君は。
残念になるな」
「仕方ないだろう、煉獄。
俺は今、残念な気持ちだからな。
当然、顔も残念になる」
はぁーっとため息をひとつつくと
杏寿郎の動きに合わせて
馬で羊の群れを囲んで
その周囲を回りながら
中央へ集めて行く
ドドドドッ
羊の群れが移動する音が
別の方角から聞こえて来て
「この羊は俺に任せろ!
冨岡。君はそっちの羊を追え!」
「言われなくても行く。
煉獄。お前こそ、その羊……逃がすなよ?」
「ああ。勿論だ!!」
グイっと馬の手綱を引いて
義勇が馬の腹を強く蹴ると
その羊の群れの音のする方角へと
馬を襲歩の速度で駆け出して行く
その様子を眺めながら
杏寿郎が頷く
「俺は…、お前が馬に乗って
全力で駆ける姿が好きだがな。
人馬一体…、義勇の馬捌きも見事だ」
その頃……
みくりは懐剣を抱きしめながら
小野寺と父様と兄様達が
戻るのを祈りながら待っていた
もぞもぞと闇の中で
何かが動くのが見えて
カタンっと物音がひとつ 響いた