第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
してみたい事とか…
行ってみたい場所…
何か無いのかと
それは無いのかとそうみくりに
尋ねたが返事はすぐには来なかった
すぅ…すぅ……と寝息が聞こえて来て
「寝て…んのか…?」
「ん…とね、……前にも
言った……けど、海…かな?
後はね……、天元さ…ん。
春…が来たら、一緒に…。
私…と、お花見……、しに…行こう…ね」
すぅ…とそのまま みくりは
眠りの方へと意識を持って行かれてしまって
春になったら……
春に…
お前は 春まで…所か…もう……
ギュッとその 一回りにも
小さくなったそのみくりの身体を
宇髄が抱きしめると
「馬鹿にしてんじゃねぇよ。お前さ。
俺の事、何だと思ってんだよ?
俺様はな、大魔法使い様だっつーの。
叶えてやるよ……、桜…」
スッと閉じていた瞼が開いて
みくりが目を細めて笑った
「…じゃあ、…約束……」
そう言って差し出して来る
小指に自分の指を宇髄が絡める
「だから、……春まで…
死ぬんじゃねぇぞ……?」
「後ね……、もうひとつ……あるの」
「何だ?言え」
「耳…貸して?」
そうみくりが宇髄に促して来て
その声を聞き取りやすい様に
みくりの口元に耳を傾けた
「あのね?私を…、天元さんの……
―――にして欲しい……の」
「んな事かよ。もっと早く言えって
言いてぇ所だがなぁ。それな。
ちょーっとばっかし、アレなんだわ。
お前さ、4番目とかでもいい?
ホラ、天元様って男前じゃん?
もう、嫁、3人居るんだわ。
今まで、話さなかったのは…悪かった」
「だって、恋をしてみたい……って
言っただけだもん、私は、お嫁さんに
なりたいって言わなかった…。
だから……、天元さんの…所為じゃないよ?
それにお嫁さんにして貰っても……私は」
なった所で何がある訳でもない
そんな事は俺も知ってるし
そう言ってるコイツ本人も知ってるんだ
「天元さん…に、お嫁さんらしい事
何にも出来ないもん…」
それに何の意味があるのか
その婚姻関係に 何があるのか
きっと誰も分かりやしねぇかも知れない
でも 少なくとも
意味ならある
俺と コイツには
みくりには…意味がある
あの美咲ってメイドが言っていた
コイツの余命は… 後 1ヶ月だって