第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
そこから先は…記憶がない
気が付いたら
みくりの家に着いてた
呼び鈴を押すと
美咲と言う名のあのメイドが出て来て
「珍しくございますね。
窓からではなく、玄関から
宇髄様がお越しになられるのは
初めて…、な様にありますが。
どうぞ。お入り下さい」
宇髄に中に入る様に促して来て
ふらつく足元で 屋敷の中に入った
二階にある みくりの部屋に
案内されて ドアの前で
美咲が宇髄の方へと向き直って来て
「最後に宇髄様がこのお屋敷を
お訪ねになられて…から、18日程
経っておりますが……、
そのお嬢様のお身体は」
そうかあの日から18日も経っちまってたのか
早く仕事自体は 終わらせては居たが
怪我で気絶して眠っていた時間を
考えるとそんなもんか……
美咲と言うメイドが勿体付けて来る
理由は 宇髄の耳には聞こえていて
「言われるまでもねぇよ、
急激に悪化…、してんだろ?音で解る」
病の音と生きている音
その音しか聴こえなかったんだ
18日前のみくりからは
だが… 今は 違う……
深い眠りに近い様な
そんな 静かな 静かでいて
たまらなく 存在感のある様な
そんな 音が聞こえる
俺がこの世で 一番 大嫌いな音だ
聞きたくないと思って居ても
嫌でも どっからか聞こえて来る 音だ
この音にも種類があるが…
どの音も 総じて
黒い黒い 深い 底なしの沼の様に深い
重苦しい 音なのだ
” 死 ” の音だ
生きている音と……重なって聞こえる
「もう…、長くねぇ…んだな?」
美咲は言葉では返事を返さずに
ガチャとみくりの部屋のドアを開いた
室内は 昼間だと言うのに
カーテンをキッチリと閉め切っていて
昼間なのを忘れそうな位に 暗い
ベットの上に眠る
みくりの姿があった
酷く やつれて
顔色も青白い
「あの日の後より、高熱が続き
そのまま数日……、意識も戻りませんでした」
「俺の…、所為だろ?」
急激にその身体を病が蝕んだ原因が
あの行為その物なのだと
遠回しにもでも無く責められていて
「みくりお嬢様が
そう、お望みになられたのであれば。
私からは、何も……。
宇髄様には、感謝しております」
美咲が深く 宇髄に頭を下げて来る