第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
仕事は…出来るだけ
早く終わらせて戻るつもりだった
どこかで 焦りが出ていたんだろう
命……こそはあったが
「あー、だっりぃ、
全然身体、動かねぇし」
うっそうと木が生い茂る
山中で地面に大の字に寝ころんだまま
鬼こそは討ち取ったが
宇髄は身動きが取れなくなっていた
もう こうなってから
3日?4日程経ってるか?
両足も……骨折まで行ってねぇけど
崖から落ちたからな 言う事聞きやしねぇ
「…ーーーさーん?」
声… 遠くで声が聞こえる
俺を 呼ぶ……声がする
「宇髄さぁーん?宇髄さんってば。
もしもーし、大丈夫ですかぁ?
生きてます?宇髄さぁーん
こんな所で寝てたら、夜になって
鬼が出て来ちゃいますよ~。
もしもーし。お返事をして下さい」
この人を子馬鹿にした様な声と
喋り口調は 胡蝶か……
俺の帰りが予定より遅いから
他の柱を動かしたって事か……
ああ くそっ
カッコ悪ぃ…な 俺
「……胡蝶…、か?」
瞼を開こうにも 薄っすらとしか開かなくて
「どうですか?宇髄さん。
お薬は効いてます?ここ、
触っても大丈夫ですか?
バサーって大きく抉られてますねぇ。
それに、出血もかなり多いです。
呼吸で血の巡りを遅くして仮死状態に
していたんですね、流石です」
憶えてる 痛み止めを使われてるから
感じねぇが 胡蝶が撫でている
右の腹の辺り 鬼の攻撃を受けて
ざっくり行っちまってる
「宇髄さんが、筋肉質で
筋層が厚くて良かったですね。
その体格でなかったら、
内臓まで行ってましたから~
そうだったら、死んでます」
「胡蝶…、御託はいいから…頼む」
「はい、後はお任せ下さい。
宇髄さんは、安心して気絶してて下さいね」
そのまま 宇髄の意識はそこで途切れた
その後俺は 蝶屋敷に運ばれて
胡蝶の治療を受けた
意識が戻るまで 3日眠ってたらしい
仕事は2週間より早く済んでたんだ
あんな事になってさえなければ
意識を取り戻した宇髄は
自分の隊服と日輪刀を掴んで
パジャマのままで病室を抜け出した
ああ くそっ… かなり出血してやがったな
頭がふらふらしやがる……
「どちらへ行かれるおつもりですか!」
廊下を塞ぐようにアオイが腰に
手を当てて立って居て
「どこって、帰るに決まってんだろ。
胡蝶には、伝えとけ」
