第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
私があの時みたいに
熱を出すかも知れないから?
それに次に来た時…答えを聞くって
それに 続きって言ってた続き
私は その夜…熱を出した
でもいつもみたいに高熱じゃなくて
微熱だった
「このぐらいでしたら、お薬は
要らなさそうにありますね」
「ねぇ、美咲…。
美咲が言ったんでしょ?
宇髄さんに私が飲んでる、お薬の話…」
「差し出た真似を、致しました」
そう美咲が言って来て頭を下げて来た
「ううん、怒ってるんじゃないの。
ねぇ、美咲は…」
「止めて欲しいですか?」
そう美咲が問いかけて来て
ううんとみくりが首を横に振った
大凡 恋愛と言うのとは
程遠いのかも知れない
でも どうせ死ぬ身なのだからと
諦めていた夢だ
でも それを…あの人は笑わなかった
笑わなかっただけじゃない
いつ死ぬか分からない身なのは
同じなのだからと言ってくれた
本当は 無意味なんだって
私にだって分かってる
一時の 夢でしか無いのだろうと
でも その願いを叶えてくれると
大魔法使いさんは言っていた
分かり切っている事なのに
それを始めるのかの
その判断を私に委ねて来た
決めていいんだと 許されている
どうしてなんだろう あの人に
良い事なんて 何一つ無いのに
その物語の結末は 不幸しかない
読む前から終わりが見えてるのだから
突然に 私の病気が治る 薬が
出来たりはしないのに
「止めて…欲しいですか?みくりお嬢様」
そう美咲がもう一度問いかけて来て
でも 分かってるんだ
私がそれを 申し訳ないと
怖いと そう思う理由は…
それは 私が…
もう こんなにも あの人の事が
宇髄さんの事が…こんなにも
もう…
もう こんなにも
「どうしよう?美咲ッ…、
私っ、…私、宇髄、さんの…事が…、
好きになっちゃってる」
美咲がすっと腰を落として
ベットの上にいる
みくりに視線を合わせて来る
「私は、知っておりましたよ。
みくりお嬢様」
そう言って 美咲が
ハンカチで零れていた涙を
そっと拭ってくれて
「お嬢様が恐れるのも、申し訳ないと
そうお感じになられるのも全て、
みくりお嬢様があの方を、
想っておられるからにこそにあります」