第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
「あー、あれだ、えっと、あれ。
お前のメイドが言ってたけど、
ちょっとずつ慣らして、距離詰めろって」
「あの、宇髄さん…今は…」
私の気のせいでなければ
目の前にその顔はあるし
「でも、俺さ、明日来ねぇし。
もしかすっと、明後日も
来れねぇかもだからさ。その分も…な」
そう言ってスッとみくりの前髪を
かき上げて額に口付けを落とすと
フッと目の前の顔が笑った
「やっぱ、お前面白過ぎ。肩…
力入り過ぎ…、取って食いやしねぇよ」
そう言いながら 額の口付けが
瞼とこめかみに落とされると
頬に落とされて
期待してしまってる 自分が居る
でも そんな 期待を裏切る様な
そんな 場所にばかり
口付けられる
「だって、俺…聞いてないし?」
聞いてない?聞いていないと言うのは
「で、決心ついたの?お前」
そうか それが聞きたかったのか
彼は…さっきのは偶然だとでも
言う様にして 確認してたんだ私に
「あ、あの…ッ、宇髄さんは…っ!?」
質問への返事をみくりが
返そうとしたのを
宇髄がその唇の上に指を置いて
黙らせると
「色気無さすぎな、お前。
明後日…仕事済んでりゃ来るよ。
来なかったら、明々後日な。
だから、それまで考えとけ」
答えはその時にと言う事なのだろうか?
宇髄さんはどうも ズルい気がする
これが大人と言う奴なのか…
大人は口付けのひとつでどうこう
言ったりはしないらしいし
さっきのアレは子供のやつらしい
だったら 大人は何なら
どうこう 言ったりするんだろ?
「だが、お前は派手にお子様だが。
俺は大人だ、俺が言ってる意味分かる?」
そう言って 首を大きく傾げてる
その顔見てりゃ 俺の言ってる意味は
大いに伝わってないってぇのは分かるわ
「確かに、私は宇髄さんから見れば
子供かも知れませんが…ッ」
「ま。お前が熱、さっきので
出したりしなかったら、続きな」
ザアッっと風が吹き込んで来て
その風にみくりが目を閉じて
開いた時には宇髄の姿はそこにはなくて
さっきの…出来事も全部
夢だったんじゃないかって
そんな気さえして来て
もしかしたら…だけど
わざと…だとか?
まさか…ねぇ でも そのまさか?
触れるだけの 口付けしかしなかったのは