第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
フッと宇髄が口の端を曲げて
「おいおい、こりゃまた、随分と
只のガキかと思ってりゃあ、
粋な事言ってくれんのね。お前。
いいじゃねぇかよ、派手に、いいわ」
そう宇髄がこちらに言って来て
私はピアノの話をしただけなのに
なんでそこまで喜ばれているのか
ちんぷんかんぷんでいると
「俺がいいって言ってんだから、
お前ははいって喜んどけ。
それがいい女ってもんだろーが」
そう言って大きな手が
みくりの頭をぐしゃぐしゃと撫でる
「ちょ、宇髄さん、止めて下さい。
そんな風にぐしゃぐしゃにされたら、
髪の毛が乱れてしまいますからぁ~」
「ああ?悪かったよ、だったら
こうしてやっから、機嫌直せよ」
そう言って 今度は
ぐちゃぐちゃに乱れていた
みくりの髪を宇髄の手が
丁寧に撫でて整えて行く
私の髪の乱れてる部分が
残っていないのかを確認してるだけ
なんだろうけど…
その赤い瞳が真剣な物になっていて
見られている 視線と
触れられている
撫でて髪を整えられている
その感覚が 心地いいとそう感じつつも
ドキドキと心臓が騒がしい
落ち着かない いたたまれない感じがして
サラサラと指先から零れて行く
みくりの髪の毛の感触を
宇髄は楽しんでいるのか
自分の手にみくりの髪をすくい上げては
その持ちあげて自分の手の上に乗せた
その髪をサラサラと滑らせて落として行く
「キレ―な髪してたんだな、お前。
サラサラしてて、絹糸みてぇじゃん。
面白ぇな、コレ。もちょっとしてていい?」
「頭ぐちゃぐちゃにした次は、
人の髪の毛で遊ばないで下さいよぉ~」
人の話を聞いてるのか聞いてないのか
本当に私の髪の毛で遊びたいだけなのか
サラサラと自分の手に髪をすくい上げては
滑らせて落とすのを何度も繰り返している
もう いい加減に…と
宇髄のその行動をみくりが止めようと
意を決して
キッと宇髄の顔を睨みつける様に見ると
その赤い瞳と視線がぶつかってしまって
蛇に睨まれた蛙の様に固まってしまった
「ああ、お前。まじまじ見てなかったから
気、付かなかったけど。目もキレ―じゃん」
スルッと頬に手を添えられて
まじまじと目を見つめられている内に
私の目を見つめている目を
宇髄が伏し目がちにして来て