第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
「あの…、決心と言うのは…一体?
何の事にありますのですか?」
後ろを振り返って
見上げると
私の顔をじっと覗き込んでいる
その赤い瞳と視線がぶつかった
スッと大きな手がみくりの
頬に触れて来て親指の腹が
みくりの唇をスルリと撫でて行く
「知りたい…んだろ?」
知りたいと 私が
大魔法使いさんに言ったのは
確か 大人の…世界…の事だ
「まだ、お前には早えよ…大人の世界は」
フッと影が降りて来て
ほんの一瞬んだけ
温かい柔らかい それでいて
少しばかり カサついた
何かが 自分の唇に触れて 離れた
自分の身に何が起こったのか
理解が出来て居ないのか
みくりが酸欠の金魚みたいに
口をパクパクとさせながら
パチパチと瞬きを繰り返していて
アワアワとしながら
俺の方を指さして固まっていて
面白い奴だな コイツと
宇髄はその様子を見て思って居た
「…なっ」
やっと言葉を発したと思ったら
言ったのはその言葉にもなっていない
声だけで
「だから、お前には早いって言ったろ?」
「かっ、からかわないで下さいッ!
だって、あんな…ッ…、あんな…事」
「馬鹿だろ、お前?大人つーのは
口付けのひとつ位で、ギャーギャー
言ったりしねぇんだよ。
それが大人ってもんなの。それから、
お前、勘違いしてるから言うけど、
さっきのは、子供方のやつな。大人は
あんなのしねぇーの」
唇と唇を合わせるのは接吻と
言うのではないのか??と
みくりが混乱していると
ニヤニヤとしながら宇髄が
みくりの方を口元を押さえながら見て来て
「ああっ!酷いにありますよ!
宇髄さんっ、私が子供だからって、
バカにしてぇ~、それに知らないのは
その…当然にあります…ッ」
「コイツがお前の全てを知り尽くしてる、
古くからの恋人だからだろう?」
そう宇髄が言って
みくりのピアノの鍵盤を押して沈めた
不思議だった いつも弾いてるみくりの
いつも聞いている ピアノの音のはずなのに
同じピアノからする音とは思えない位に
その音が済んで聞こえた気がして
目が醒めるかの様にその音から
世界が輝く様に彩りながら 目覚めて行く
「確かに、私の全てを
知り尽くした相棒にありますが…」