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ひみつのひめごと【鬼滅の刃/R18】

第36章 聞こえない音  お相手:宇髄天元


随分とたどたどしいピアノだった

この前ともまるで別人だ


だがその音と共に俺の耳に届くのは

紛れもない 魂の叫びにも似た音で


アイツにとってピアノは
生きている事の証その物なんだと
俺に感じさせるには十分だった

コンコンと窓を外からノックする音が聞こえて

窓は開かずに美咲には鍵だけ
開けて置いて貰ったから

「開いてるから、どうぞ。宇髄さん」

ガラッと窓が開いて

「よぉ!調子どーよ。
調子崩してた感じ?お前。
もう、ピアノ弾いていい訳?」

「きっと、あの魔法の
飴のお陰かなぁって。
あれ、大魔法使いさんからでしょう?」

「そそ、お子様には飴ちゃんぐらいが
丁度いいだろ?」

昨日まで寝込んでたのが嘘みたいだな

その顔を見てると
笑顔を見てると

病気なんだって事忘れちまいそうだ

「子ども扱いして貰っては困ります」

「そーかい、そーかい。じゃあ、
今度は大人向けの贈り物でも
用意するわ。それでチャラな」

じっと宇随の赤い目が
みくりに向けられていて

「な、もう弾かねーの?」

「弾いて…いいんですか?」

お世辞にも 今日の私のピアノは
上手いとは言えない

そんな ピアノを聞きたがるなんて

宇髄さんって やっぱり

ちょっと 変わってる


「ど?弾く感じ?」

「は、はい」


私がピアノに向かって
姿勢を正すと

宇髄さんは壁に身体を預けて

パチパチと小さく手を叩いた


自分の目から 知らず内に

ポロっと涙が零れた


意識して流した訳じゃない

一瞬で思い出したんだ

大きなホールを埋め尽くす聴衆からの

ホールを震わせる程の拍手を


こうして 私と宇髄さんだけの

2人だけのコンサートが始まったんだ


自分でも不思議だった

さっきまで 動かしにくくて

重たいって思って居た指が

不思議な位 自然に動いたから


嬉しかった

純粋に 嬉しかった


その時 弾いた 1曲は


私がこの病気になってから


一番の出来だった…んだ


1曲弾き終えて


座ったままで身体を
壁に預けている宇髄の向けると

出来る限り深く 深く

みくりが頭を下げた


「お聴き頂きまして。
ありがとう…ございました」

フッとその宇髄の顔に笑みが浮かんで



「やっぱ、俺、好きだわ。お前のピアノ」



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