第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
私が宇髄さんと出掛けた事自体が
夢か何かなんじゃないかって
それから 3日間熱で寝込んでる間に
みくりはベットの中で考えていた
「あの、みくりお嬢様。
こちらが窓の所に置かれていました」
そう言って美咲がこちらに向けて
両手を広げるとその手の中には
黄色く染まったイチョウの葉があって
その大きなイチョウの葉の贈り主が
宇髄さんだと言う事はすぐに分かった
「これ、大魔法使いさんからね」
「その…、こちらは昨日置かれておりまして」
そう言って小さな和紙で出来た
手の平にすっぽりと収まる
小さな箱をみくりに差し出して来る
「本来でありますなら、昨日
お渡しするべき所にありましたが
昨日は、まだみくりお嬢様のお加減が
優れないご様子でしたので。
申し訳がございません」
可愛らしい その和紙の箱の中には
おはじきとビー玉の形の飴が入っていて
その飴を眺めて ふふふとみくりが
声を漏らして笑った
「私は子供ではないと、言いましたのに。
ねぇ、美咲。食べてもいい?」
「ええ。勿論にあります」
みくりがビー玉の形をした飴を
ひとつ 指で摘まんで口の中に入れる
コロコロと飴を口の中で転がす
素朴な飾り気のない甘さが広がる
「甘い…」
「飴にありますから、甘いかと」
「美咲。美咲も食べる?ひとつ」
「いえ、美咲はご遠慮致します。
そちらは大魔法使いの宇髄天元様から
みくりお嬢様への贈り物に
ありますから、お嬢様がお召し上がり下さい」
「ねぇ、美咲」
「はい、何にありましょうか?」
「万年筆と紙をこちらに」
「はい、只今」
美咲が用意してくれた紙に
お礼の手紙をみくりがしたためていて
「ねぇ、美咲」
「終わられましたか?」
まだ みくりは万年筆を握ったままで
書きあがった訳ではなさそうだった
みくりが視線をピアノに向けると
「明日には、ピアノ…弾きたいなって
そう思っただけ…よ」
「ええ。きっと明日には熱も下がりましょう。
その時は美咲も、お手伝いを致します。
ですから、今日は沢山お昼、お召し上がり
下さいませ。」
スッとみくりが自分の左胸に手を当てる
生きてる そう 生きてるんだ
今 私は…