第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
あの後 家に送り届けられて
美咲に旦那様がお戻りになる前にと
化粧を落とされワンピースから
普段の服に着替えを急かされる
後 それから
夜になる頃には 無理をして
出掛けた所為で 私は熱を出してしまった
熱で頭がぼんやりする
バチが当たったんだ
「みくりお嬢様、
お加減は如何ですか?」
新しい物と交換をしましょうと
美咲がみくりの頭の
氷の溶けた氷嚢を新しい
氷嚢と交換する
「食欲は御座いますか?野菜の入った
卵のスープをご用意しておりますが…
お召し上がりになれそうでありましたら、
お持ち致しますよ?みくりお嬢様」
それから美咲の用意してくれた
野菜の沢山入った卵スープを流し込んで
今日は早めに休むと言って
美咲を自分の部屋から追い出してしまった
きっと 美咲はもう
出掛けるの…許してくれないだろうなぁ
私が熱を出しちゃったから
怒られると思ったから
でも こうしてると
今日 出かけた事そのものが
全部 夢か幻か何かなのかなって
そんな気さえして来た
大魔法使いさんは 本当に魔法使いみたいだった
空だって飛べちゃうんだもの
不思議な人…人なのかな?
それに 言っている事もどこか
現実味が無い様な?
どこまでも本気な様で
どこまでが嘘なのか分からない様な
そんな事を言うから 余計に私は
全てが熱に浮かされてみた
夢か何かにも感じてしまって
今までそれを
口に出した事なんて無かったのに
私がそうしてみたいなんて
言った事なんて無かった
どうせ 自分は死ぬんだ
未来なんて無いって
ずっとそう思ってた
でも あの人は違うって
今 生きてるからってそう言ってた
死ぬのは 誰もそうなんだって
確かにそうだ
私は病気で死ぬけど
でも 病気じゃない人も皆死ぬんだって
宇髄さん自身もいつ死ぬか分からないって
それって いつ死ぬかが大事じゃなくって
今 生きてるって事が 大事って事だよね?
先の未来を心配して
終わる前から後悔するんじゃなくて
始める前から終わりの心配なんて
しなくていい…って意味??
「やっぱり、不思議な人…」
突然襲って来た眠気に
意識が遠のいて行くのを感じる
宇髄 天元さん…
彼の事を もっと
知りたいと思った