第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
まぁ そうだわな
後悔したり…しねぇか
後悔するぐらいなら…ってやつか
「だったら、その願い。
この大魔法使い様が叶えてやるよ」
叶えてくれると言う
その願いと言うのは…?
「叶えてくれる…って言うのは?」
「してみたいんだろ?」
してみたい
私が してみたいと言うのは
恋の事だろうか?
「あの、しかし宇髄さん、問題が」
「問題?」
じっとみくりが宇髄を見つめて来て
「大変です、宇髄さん。
私は宇髄さんの事は嫌いでは
ありませんが、そう言った意味で
好きではありません!恋には
ならないのではありませんか?」
そう真剣な様子で
宇髄に訴え掛けて来て
その様子が あまりにも
必死で思わず吹き出してしまった
「ぶっ、…お前、面白い奴だな。
いいわ、気に入った。うん…気に入ったわ」
そう一人で何かに
納得をしながら宇髄が言って来て
何が何やらちんぷんかんぷんだ
こっちが真剣に話をしてるのに
そんなの事は気にしてる様子もない
「さて、あんまり遅くなると
お前の所のあのメイドに怒られそうだからな。
そろそろ、帰るぞ。みくり」
もう 確かに
それなりの時間が経っているから
そろそろ帰らないと
美咲に怒られるかも知れない
それに もう外出しちゃダメって
そう言われちゃうかも
「そんな顔、してんなよ。
また、どっか連れてってやっからよ」
自分の気持ちが顔に出てしまっていた様で
ガシガシとその大きな手に
撫でられてしまった
帰りは…私に負担を掛けない様にか
ゆっくりとしたスピードで
走ってくれている様だった
そのお陰で こうして
抱きかかえられながら
その顔を眺める事が出来る
「飛ぶぞ。しっかり掴まってろ」
そう言われて
ギュッと宇髄の隊服を掴んでいた手に
力を入れてその胸に自分の顔を引っ付けると
自分の鼻から入る空気が全部
宇髄さんの香りに変わる
どうにも 落ち着かない
胸の奥がそわそわする
この移動が 怖いとかそんな気持でもない
こうして 抱き抱えられている
その逞しい腕を
自分の身体を包む熱を
あそこに行く時に移動では
何も感じなかったのに
景色にばかり気を取られていて
でも 今は
景色がどうでも良くなってしまって
全然 見えずにいた