第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
自分の身体がこのまま
小さくなっちゃうんじゃないかって
その圧に耐えながらみくりが
必死に宇髄にしがみつく
ふっとその身体を押さえつけていた
圧が抜けてふわっとした浮遊感の
様な物に包まれると
「みくり。目、開けてみ?」
その言葉に目を開くと
空…に浮いてる?
いや 違う ここ送電塔の上だ
「こんな所、乗っちゃって大丈夫
なんですか??電気っ」
「痺れてねぇだろ?今、なら
なんともねぇよ、下見ろ」
下?と言われて
その言葉にみくりが自分の下を見ると
自分の眼下には上から見下ろす
大イチョウの大木があって
「わぁっ、私、上から
イチョウの木を見たのは初めてです」
「悪くねぇ、だろ?上から見るのも」
そのゆうに20メートルはある
大木を上から見下ろすなんて経験は
そうそうに出来るものじゃない
「俺は、毎年、こっから見てんだ。
ここなら、誰も邪魔入んねーし。
ゆっくり見れるだろ?下、行くか?
今は、紅葉のシーズンだからな。
甘酒やら、焼き栗もあるからな」
「私は、イチョウを見に来たんですって
食べ物が食べたくて来たわけじゃ…。
でも、あのイチョウを下から見てみたいです」
ストンと地面に降り立つと
みくりを地面に立たせてくれて
バランスを崩しそうになった身体を
そのしっかりとした腕に支えられる
「おっと。しっかり立ってろよ?
辛いか?どっか、腰降ろせるトコ
ああ、あった」
境内にあった ベンチまで
私の身体を支えてくれて移動する
「ちょっと、ここで待ってろ。
イチョウでも見てろよ?」
そう言ってどこかへ行ってしまって
ぽつんと一人残される
しばらくすると 汁粉の入ったお椀を
持って戻って来てみくりに宇髄が
それを差し出して来て
「ホラ。飲んどけ飲んどけ。
身体、冷やすとダメだろ?
汁粉ならお前でも飲めるだろ?」
熱すぎたのか
俺の隣に座っているみくりは
ふぅふぅと両手でお椀を持ちながら
汁粉に息を吹きかけていた
「お前さ、猫舌なの?」
「熱すぎて…飲めない…です」
「日暮れちまうぞ?手伝ってやるよ」
こっち向けてと宇髄が促して来て
何をするのかと疑問に思いつつ
みくりが自分のお椀を宇髄の方へ
差し出すと フゥーーッと
宇髄が息を吹きかけて来て