第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
その 私の拙いピアノを
また聴きたいって
そう言ってくれて
色とりどりの木の葉のお礼と
それだけじゃなくて
それとは別に
お礼を してくれる…って
そう言ってくれた
大魔法使いさんがくれた
黄色い大きなイチョウの葉っぱを見て
この黄色い葉を沢山付けた
その木が見たいてそう思った
「やっぱり…、不思議な人」
私は ずっとこの部屋で
ピアノだけ弾けていたら満足だった
そう それだけでいいって
そう思って居た
ずっと…
それ以外を 望む事からも
目を逸らしていたんだ
ずっと…
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次の日になって
その日は少しだけ熱があった
大した事ないくらいの
薬を飲めば下がるくらいの
微熱だったから
朝に体調を尋ねに来た美咲に
”何ともない”とそう答えた
例え微熱であっても
美咲は心配性だから
それを話したら
今日の外出はしたらダメって
そう言われそうだったから
美咲が手伝ってくれて
えんじ色のベルベットの
ワンピースに着替える
いつも 普段着のワンピースだから
余所行きのワンピースを着たのも
随分と久しぶりな感じがする
そのえんじ色のワンピースと
お揃いの帽子が被りやすい様に
美咲がみくりの髪に
丁寧に櫛を通して
髪を纏め上げて行く
「みくりお嬢様、今日は少し。
おめかしを致しましょうか?」
そう言って美咲が出して来たのは
ピアノの発表会の時に使っていた
メイク道具の入ったバニティバッグで
「え?でも…イチョウの木…
観に行くだけだよ?美咲」
「このメイク道具も、しまっている
だけよりも、お嬢様を彩るお手伝いを
したがっている事でしょうから。
ご心配なく、みくりお嬢様。
舞台用ではなくて、普段向きにしますから」
その美咲の言葉通りに
壇上に立つ時は遠くからでも
目鼻立ちがわかるように
かなり強調的なメイクをするから
みくりは今もそのメイクを
されるのかと身構えてしまって
居たのだけども
美咲が普段向きにすると
そう言ってくれた言葉の通りに
桜色のフェイスパウダーは
顔の肌色を整えて
明るく健康的に見せてくれるし
ふんわりと乗せられた
ピーチピンクのチークも
血色を良く見せてくれていた