第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
バサバサと音を立てて
なびいていた カーテンが止まって
風が…やんだ
乱れた髪をみくりが自分の手で押さえて
顔を上げると そこには
白銀の髪に 赤い瞳をした
長身の男が立って居て
思わず…… みくりは
その男の姿を見て
言ってしまって居た
「お迎えが…随分と、早くは
ありませんでしょうか?」
その白銀の髪をした男が
端正に整った顔を歪ませる
「迎え?俺は迎えに来ちゃねぇが。
まぁ、勝手に邪魔さして貰ったのは
違いねぇけど。アンタか?
あの、ド派手なピアノの音の主は。
ピアノはド派手だったが、これまた
随分と、地味な女だなぁ……普通すぎじゃん」
ガシッとみくりが男の
服を握りしめると
「お願いがあるのですが。天使様」
「はぁ?天使…、お前何、派手に
阿保な事、抜かしてんだ?」
「え?天使様では……
あられないのですか?私を
迎えに来て、下さったのでは?」
目の前の女は訳の分からない事を
ベラベラと話すばかりで
宇髄ははぁーっと深いため息をついた
「勝手に部屋に入ったのは、悪かった。
俺は、天使様なんかじゃないの、人間ね?
俺様の名前は、宇髄天元様、一度しか
言わねぇからしっかり覚えとけよ?んで、
アンタの名前は?…あんだろ?名前」
「あの、宇髄様はどうやって
ここまで来られたのですか?」
「な、ま、え。聞いたの忘れた訳?」
明らかに宇髄と名乗った
窓から入って来た不審者は
迎えに来た……天使ではなく
人間だと言っていて
そして私の名前を聞いている様だった
「みくりです」
「あ、そ。で、みくりとやら。
俺様の質問に答えろ、いいな?」
何だかよく分からないが
質問に答えろと威圧されながら言われて
その圧に押されてしまって
みくりがコクコクと頷いた
「さっきのピアノ、……弾いてたのお前?」
「ええ。そうですが…」
「じゃあ、聞くが。昨日の
同じ時間に、ピアノ弾いてたのもお前?」
「ええ。そうですが、それが何か?」
みくりの返答を聞いて
宇髄と名乗った白銀の髪の大男は
うーーーんと腕組みをしながら
唸り声を上げていた
「みくり…だっけ?
お前さ、ピアノ上手い訳?
それとも下手な訳、どっち?
わざと下手くそに弾いてる…とか?」