第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
その頃 薬の卸しに来ていた
しのぶに犬飼がお茶を出していた
「胡蝶さん、どうぞ…」
「すいません、頂きますね」
しのぶが優雅な所作で
茶器を手の取り その器に鼻を近付けた
「うん、この香り…茉莉花ですね…」
「いや、光栄です。こうして
胡蝶さんと、お茶を頂けるなんて…」
「また、そんな上手ばかり仰って。
そんな風に言っても何も出ませんよ?」
そう言ってしのぶがくすくすと笑った
「でも…、アレを見られていた……
のであれば。私はお支払いをしなくては
なりません。貴方に……口止め料を」
バタンとドアがノックもなしに
開いてそのまま室内に義勇が入って来る
「失礼する」
「誰かと思ったら、冨岡さんですか?
いい加減にしてください。普通は
ドアを開ける前にノックするなり
声を掛けるなりするものです」
「胡蝶。まだ居たんだな」
「むっ、悪かったですね、
居たらいけませんか?部外者は早々に
退散致しますよ~」
「いや、帰るな。胡蝶。
俺は、お前に用があって来た」
一旦椅子から立ち上がって
部屋から出ようとしていたしのぶが
義勇の言葉に足を止めた
「冨岡さんが、私に用事…ですか?
そんな、珍しい事もあるんですね」
「時間を取れるか?
二人きりで話したい」
蟲毒の事は内密にと
煉獄に言われいてるからな
胡蝶以外の耳には入れられん
「私と冨岡さんが、話……ですか?」
この口下手な幼馴染が
改めて話したい事とは…何なのだろうか
「それにここは後宮だからな、
俺は誰かに見られるとマズイ」
その言葉にその場にいた
三人が顔を見合わせると
そうだ ここは後宮だった
宦官でもない義勇が
本来なら入る事も許されない場所だ
「場所を改めたい、それも取り急ぎだ」
「はいはい。分かりましたよー。
では、すいません犬飼さん」
犬飼にしのぶが頭を下げて
そのまま義勇と共に医務室を後にする
「でも、少々
目立ちすぎです。冨岡さん」
そう言ってしのぶが
自分の肩に掛けていた
ストールを義勇の頭に掛けた
「女物のストールですし、
無いよりはマシですから。
幾らスルタンのご命令とは言え。
冨岡さんも、
あまり無茶をし過ぎないで下さい」
後宮を抜けて
王宮の庭の片隅のガゼボで向かい合う
「胡蝶、これを見て貰えるか?」