第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
女はそれを吐き出してから
がっくりと項垂れて
気を失っている様だった
「蟲毒…か、あちらも随分と
手の込んだ、面倒くさい事をする。
ああ、あまり俺に厄介ごとを押し付けるな」
そう不満を漏らしながら
伊黒が牢の隅に置かれている
水瓶に桶を突っこんで水を汲むと
バシャっと女の顔に水を掛ける
「んっ、……ん、あ、…こ、
ここは……、私は…って、伊黒様?」
「気が付いたか?お前はどうやら
この、蟲毒で操られてた様だが。
何か、おかしなものを口にした
記憶はあるか?
どんな些細な事でもいい。思い出せ」
「そ、そう言えば…思い出した
事があるのですが……」
その女の言葉に
伊黒が頷いた
「そうか。でかした。
後は、任せておけ、お前は
誰の侍女…、だったか……」
女を戒めていた鎖を外すと
伊黒が女にそう問いかける
「牡丹姫様の侍女にあります……」
「しまった。遅かったかも知れん。
お前、その瓶は…?まだあったか?
お前、動けるか?俺はスルタンにこれを
伝えに行く、お前は……自分の主の所へ戻れ。
いいな?すぐにだ」
あの牡丹姫の侍女の女の話を
纏めるとこうだった
あの侍女は 今年の納税品の
ブドウ酒を受け取って
そのまま牡丹姫の部屋へと運んだ
牡丹姫から皆で飲もうと提案されて
前の残っていた分と
その新しいのをテーブルに用意した
少なくとも 数人は
その蟲毒入りの酒に手を付けている事になる
蟲毒は呪い…
相当な術死でも 数人を一度に
呪い殺したりは出来ない
あくまで 自分と対等のレベルの人間一人が
一度に呪い殺せる人数だ
そして 今の様に
術を解かれれば
その呪いは 呪いを放った
術者へと返る
そして…蟲毒を服用した人間を
こうして 使役する事が出来る
殺す以外の……使い方が出来るのは
この 複数の種類の呪いを混ぜた
複合呪術…だからなのか…
只の蟲毒だけならば
ここまでの悪臭…はしないだろう……
「相当…、マズイ……事になった。
信用しない、と言いたい所だが。
術が第一段階まで、整った間者が
既に、数人。後宮の内部に居ると言う事か…」
ひとりが術が解かれたら
またひとり そしてまたひとりと
操る相手を変えて行くつもりか…
小賢しい…真似をする…