第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
みくりの手にある
カーマストラと呼ばれる性典の
目次の部分を橘が開くと
トントンと指で指し示した
「カーマストラは全7部、35章で
構成されておりますが…、2部に
主に、性的な事について詳細に
記載がされております。しかし
一般的に性典の色合いが強く
語られてしまっておりますが……」
橘の言葉通りに
私も今まで名前程度には知っていたが
それしか書いてないのかと思って居た
「他の部には、
何が……書かれているのですか?」
「女性が女性として生まれ、
そして愛されると言う事について。
そして、愛される女性になるには
どうあるべきなのかが、指し示された
バイブルにありますよ…。その全てを
読めば…貴方に人生の幸せを…
もたらしてくれるでしょう」
この一冊の本には……
人生の幸せへと自分を導く
その術が書かれているのだと
そう橘がみくりに言った
「人生の……幸せ、ですか……。
私には、まだ早すぎる気がします」
「そうでもないでしょう、……貴方が
そうであれど、スルタンはそうは
お考えではあられないでしょうからね。
ははは、それも愛される者ゆえに
ありましょうが……。既に
愛されておいでであられる、貴方には
不要な教えかも知れませんがね?」
「あの、橘…さんっ!
こちらも……一緒にお借りしても?」
そう言って みくりが
自分の手にあるカーマストラの本を
持ち上げて橘に見せると
橘が穏やかな笑顔を浮かべて
「ええ。勿論……それもお持ち頂いて
結構でありますよ。みくり姫様」
『こちらに在られましたか、
みくり様。白薔薇姫様と赤薔薇姫様が
お待ちにあられます。すぐにお戻りになって
お支度を整え下さいませ』
ああ そうだった
本につい 夢中になってしまっていて
今日から…あれ?おかしいな
白薔薇姫と赤薔薇姫 それから牡丹姫から
夜伽についての手ほどきを受けると
そう 聞いていたのに
「あの、…牡丹姫様は…?」
「牡丹姫様は……、
少し遅れられるとお聞きしております」
「すいませんでした、橘さん。
この、二冊…しばらくお借り致しますね」
みくりが自分の胸に
書庫で借りた二冊の本を抱いて
ペコリと橘に頭を下げて
自分を迎えに来た侍女と共に
書庫を後にする